麻糸あさいと)” の例文
旧字:麻絲
そんな風だから私の家の暮し向きのゆたかであるはずはなく、そのためであろう、母と叔母とは内職に麻糸あさいとつなぎをしていた。
そして麻糸あさいとかれるにつれて、糸巻いとまきはくるくるとほぐれて、もう部屋へやの中にはたったまわり、になっただけしか、いとのこっていませんでした。
三輪の麻糸 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
彼の頭は、こんがらがった麻糸あさいとのように乱れた。どうすればいいのやら、わけがわからなくなった。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、災厄さいやくはつぎからつぎへと起こる、ある夜かれが家へ帰ると母が麻糸あさいとつなぎをやっていた、いくらにもならないのだが、彼女はいくらかでも働かねば正月を迎えることができないのであった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「二階の障子にブラ下げたのは、麻糸あさいとと、細いひもと、かもじの三品だ」
いふ所謂いはゆる乞食かたひ棒打ぼううちにてすこしも役に立ざれば腹の立のは無理ならねど此は是までの事と斷念あきらめ必ず案じる事なかれととけさとせど娘氣の亂れ染ては麻糸あさいととくよしもなき其をりから隣の家の糊賣のりうりお金例の如く營業なりはひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
我と言ふ名に迷ひ出でて麻糸あさいと有無うむにはなれぬ身こそつらけれ
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
ひめさまはそのばんいいつけられたとおり、大きな麻糸あさいとたまをお婿むこさんの着物きもののすそにいつけておきました。
三輪の麻糸 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ただ一つ土のなかから、丸いたまと、これについている沢山の麻糸あさいととをみつけだした。
大空魔艦 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「二階の障子にブラ下げたのは、麻糸あさいとと、細いひもと、かもじの三品だ」
今夜こんや婿むこさんのまえに、部屋へやにいっぱい赤土あかつちをまいておき。それから麻糸あさいとはりにとおしておいて、お婿むこさんのかえるとき、そっと着物きもののすそにさしておき。
三輪の麻糸 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「端つこに麻糸あさいとが附いてゐますよ」