飛燕ひえん)” の例文
離れて、郷里にあるうちは、毎日のように、錦帯橋のほとりへ出て、飛燕ひえんを斬って大太刀のつかいようを工夫されたと仰っしゃったな
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
飛燕ひえんのごとく跳ぶ又平。だだだ! 足音が乱れて、が! ぱちり‼ 刃と木剣と鳴る、瞬時にして権六が真っ向を打たれた。
半化け又平 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ブルッと血顫ちぶるいした葉之助、そのまま前庭を突っ切ると、正面に立っている古代造り、久田の姥の住む館へ、飛燕ひえんのように飛び込んで行った。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
深海色ふかみいろにぼかした模様の錦紗縮緬きんしゃちりめんの着物に、黒と緑の飛燕ひえん模様の帯を締めた夫人は、そのスラリと高い身体からだを、くねらせるように、椅子に落着けた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「ハ、ハッ、昔の褒姒ほうじ飛燕ひえん貴妃きひなどいう絶世の美人は、悉くそうして選び出されました」
燕子花は町によく売って居る飛燕ひえん草の類で、学名は Delphinium grandiflorum L. var. chinense Fisch というのです。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
女のからだはまっぷたつと思いきや! 飛燕ひえんのごとくに飛びあがったそのすばやさ! つぎの瞬間には将監の頭上で身をおどらし、うしろ横手で、もう懐剣をかまえております。
亡霊怪猫屋敷 (新字新仮名) / 橘外男(著)
沈光ちんくわういたゞきよりひつくりかへりざまに梯子はしごひかへたるつなにぎり、中空なかぞらよりひとたび跳返はねかへりてけんふるふとへり。それ飛燕ひえん細身さいしんにしてよく掌中しやうちうふ、絶代ぜつだい佳人かじんたり。沈光ちんくわう男兒だんじのためにくものか。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかし、もっとはやかったのは、少年郎わかものの姿だった。飛燕ひえんわざといってよい。武松のつかの手をばッと間髪に蹴上げていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
横へかわした九十郎が、踏み込もうとした背後から、織江が飛燕ひえん飛びかかった。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
親方の玉川權之助が、頭の上に兩手を突き上げると、そのてのひらの上で、蝶々てふ/\のやうに踊るんです。——唐土もろこしの何んとか言ふ殿樣か大名のきさきに、飛燕ひえんといふ美しい女があつたんですつてね。
肩技かたわざ、背技、膝技から、尖飛せんぴ搭舞とうぶノ法などと呼ぶ五体十部の基本の上に、八十八法の細かい型があって、飛燕ひえん花車かしゃ龍鬂りゅうびん搏浪はくろう呑吐星どんとせい、などさまざまな秘術もある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
弦之丞の身は飛燕ひえんのごとくかわっていた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
飛燕ひえん小躯しょうくに観衆はわき立ち、李逵りき
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)