たましひ)” の例文
旧字:
而して更に新らしい驚異の鋭感にやるせなきわれ自らのたましひを慄かす近代の心にもなほありしそのままの声音に郭公は啼き、寂しい日本の笛は鳴る。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
その当時晴代はたましひ脱殼ぬけがらのやうな体のがなくて、責任を負はされてゐる両親や多勢の妹たちがなかつたら、きつとあの時死んでゐたらうと思はれる程だつた。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
その癖、顔一杯に微笑を湛へながら、「恋人を突然奪はれたその令嬢に、同情して、黙つて私に委して下さいませ。私が責任を以て、青木さんのたましひが、満足遊ばすやうにお計ひいたしますわ。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
われはあこがるるたましひなり。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
わが知るもののたましひ
四八 黄泉路 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
而して身もたましひも顫へながらなほ新しい官能の刺戟を求めたかの時のみづみづしい心をあちらこちらと拾ふてあるくのが何時となしに私の習慣となつた。
新橋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
而して昼は幽かに、夜は清く、朝は寂しい自鳴鐘のやうに時雨のたましひをそそのかしてほのかに白芥子の花にまつわる。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ただ置いてきぼりにされた幼いたましひが泣いてゐるばかり、金の絃の顫音さへはてはやんで了つた。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
色々と小生の近状を御配慮下さる方々に、ただ小生が健全で如何なる苦痛と羞辱とにも耐え忍び得る程、敬虔な勇気ある状態に自己のたましひを温めつゝある事をお伝へしたいと思ひます。
わが敬愛する人々に (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
鏽銀しやうぎんかねる……かすかに、……かすかに……やるせなきたましひめもあへぬ郷愁ノスタルヂヤア
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
たましひのうつらぬひとみただくるはしき硝子戸がらすどそとをうち凝視みつむ。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
たましひの雑艸園の白日はくじつはかぎりなくいたましきかな。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
二人ふたりがほかのたましひのありとあらゆるその呪咀のろひ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
たましひのありかをぞうちまどまどふりあふぐ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
暮れもなやめるたましひ金字きんじのにほひ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
馬はたましひかたむけて聴入きゝいる如し
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
感極まつたたましひ法悦はふえつ
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
たましひをゆするがごとし
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)