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雪三
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せつざう
主命に
依りて
糸子縁談の申し
込なるべし、
其時雪三决然とせし
聲音にて、
折角の
御懇望ながら
糸子さま
御儀他家へ
嫁したまふ
御身ならねばお
心承るまでもなし
心は
變化するものなり、
雪三が
徃昔の
心裏を
覗はゞ、
糸子に
對する
觀念の
潔白なること、
其名に
呼ぶ
雪はものかは、
主人大事の
一ト
筋道、
振むくかたも
無かりし
物の
今我れ
松野を
捨てゝ
竹村の
君まれ
誰れにまれ、
寄る
邊を
开所と
定だめなば
哀れや
雪三は
身も
狂すべし、
我幸福を
求むるとて
可惜忠義の
身世の
嗤笑にさせるゝことかは