ドア)” の例文
出来るだけ落ち付き払って、如何にも自分の家の客間へ出て来た若い貴族と言った態度で、私はドアの中へ一歩入って行きました。
ドアの外に向って呼ぶ)おいおい、居間の鏡を寄越よこせ。(闥開く。侍女六、七、二人、赤地の錦のおおいを掛けたる大なる姿見を捧げ出づ。)
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いとはしたなくて立てる満枝はドアくに驚かされぬ。入来いりきたれるは、附添婆つきそひばばか、あらず。看護婦か、あらず。国手ドクトルの回診か、あらず。小使か、あらず。あらず!
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
先方さきでも何言なにごとも云わずにまた後方うしろって、何処どこともなく出て行ってしまった、何分なにぶん時刻が時刻だし、第一昨夜私は寝る前に確かに閉めたドアが外からけられる道理がない
闥の響 (新字新仮名) / 北村四海(著)
カフェー人魚シレネドアを押して、寒い風と一緒に飛込んで来たのは、関東新報記者の早坂勇——綽名あだなを足の勇——という、筆より足の達者な男でした。
女記者の役割 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
たちまちドア開けて、三人の侍女、二罎ふたびんの酒と、白金の皿に一対の玉盞たまのさかずきを捧げて出づ。女房盞を取って、公子と美女の前に置く。侍女退場す。女房酒を両方にぐ。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一月十七日なる感はいとはげしく動きて、宮は降頻ふりしきる雪に或言あることばを聴くが如くたたずめり。折から唯継は還来かへりきたりぬ。静にけたるドアの響はしたたかに物思へる宮の耳にはらざりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ふとある朝——五時前後と思う——寝室のドアがガチリといた様な音がしたので自分は思わず目が覚めてみると、扉のところに隣の主人が、毎日見る、矢張やっぱり巡査の様な服装を着けて、茫然と立っている
闥の響 (新字新仮名) / 北村四海(著)
暫らくすると廊下に足音がして、ドアは静かに外から開けられました。窓から入る朝の光線を正面まともに浴びて、入口に立ったのは、高雅な若い紳士——。
公子 (と押す、ドアひらきて、性急に登場す。おも玉のごとくろうけたり。黒髪を背にさばく。青地錦の直垂ひたたれ黄金こがねづくりのつるぎく。上段、一階高き床の端に、端然として立つ。)
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
満枝は彼のおもてしたたか怨視うらみみまたたきず、その時人声してドアしづかきぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
また今見た姿を隣人となりのひととは思ったが寝ぼけ眼の事だから、もしや盗賊どろぼうではないかと私はすぐ寝台ねだいから飛下とびおりて行ってドアじょうしらべると、ちゃんとかかっている、窓の方や色々いろいろと人の入った形跡を見たが
闥の響 (新字新仮名) / 北村四海(著)
折から、ドアを押して入った一人、足の勇は肩に手を置いて、眼は高城、園、某、某、と一座に会釈えしゃくして居ります。
女記者の役割 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
十分、二十分、三十分、やがて小一時間も経つと思う頃、玄関から廊下が急に騒がしくなって、勢よく開いたドアの蔭から、二人の男女が旋風つむじのように飛込んで来ました。
女記者の役割 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
花枝の明るい顔がドアの蔭から現れます。