間歇かんけつ)” の例文
これらの熔岩も、噴火丘も、まだ新しいもので、多くは一八五〇年代から、一九四二年にかけて、間歇かんけつ的に噴き出したものである。
黒い月の世界 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
私は言わば、ただ、その生墻に間歇かんけつ的にむらがりながら花をつけている野薔薇の与える音楽的効果を楽しみさえすればよかったのであるから。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
それにかびの臭いの外に、胸の悪くなる特殊の臭気が、間歇かんけつ的に鼻をいた。その臭気にはもやのように影があるように思われた。
淫売婦 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
医者を呼びにやり、手当をして貰うとおさまったが、明けがたまで間歇かんけつ的にふるえの発作があって、信乃はとうとう朝まで寝ずに看護していた。
めおと蝶 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
勿論間歇かんけつ性のものには違いないけれども、老齢者が息を吸い込む中途で調節を失うと、現に真斎で見るとおりの、無残な症状を発する場合があるのだ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
旅行や芸術鑑賞や、ことに彼が腹いっぱいつめ込んだ音楽は、初めのうち彼にとって間歇かんけつ的な熱烈な娯楽となった。
この間歇かんけつ的な雨は何時まででも降る……。幾日でも、幾日でも降る……。彼の心身を腐らせようとして降る……。世界そのものを腐らせようとして降る。
風塵ようやく収まって世界は今や夕凪ゆうなぎの寂静に帰ったが、この平和を間歇かんけつ的のものたらしめず永久に確保し行かんと欲する事が、この五年間戦雲にとざされた後に
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
この騒動中の騒動に頓着なく、犯行はその後も依然として間歇かんけつ的に頻発ひんぱつしたが、犯人そのものの影は、その時消え去って以来、いまだに消えたまんまなのだ。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
間歇かんけつ的ではあつたが、五年も六年も商売をしてゐたお蔭で、妊娠の可能率が少ないだけに、尚更なほさら何か奇蹟きせきのやうに思へる人の妊娠がうらやましかつたり、子持の女が
チビの魂 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
熱海の間歇かんけつ温泉ではないが、この、珍無類夫妻の間には、間歇的に例の無言の闘争が始まるのだった。そして、彼女は終日おしになり、泡鳴はいろいろの所作をした。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
どういふわけか、今夜の彼からは淡々とした話振りの底に熱い情熱が間歇かんけつ的にほとばしつて、動揺し勝ちの歳子をしば/\動揺さした。そして彼はしきりに恋愛の話をしたがつた。
夏の夜の夢 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
其処には熱湯を噴き出す、此の国ではゲエゼル(間歇かんけつ噴出温泉)と云つてゐる、温泉がある。水の泡が溜つて滑かな白い結晶になつた岡の上の大きな谷から噴き出してゐる。
訪ねて来た友太の友人が、帰りがけに何かあまり上品でない冗談を言うのにも、気づかれまいとして高く笑ってみせたが、やがて間歇かんけつ的に襲う痛みは堪えられないものになってきた。
和紙 (新字新仮名) / 東野辺薫(著)
今で言う間歇かんけつ遺伝ですが、当時はそれをおそれ憚って、三五郎の親の代に軽井沢に引込み、山狩りを生業に細々と暮して居りましたが、何んの因果か、三五郎の女房も、異人の上陸と
裸身の女仙 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ボウイ達がの長いブラシを持って走り廻っていた。誰もかれも真白な呼吸いきをしていた。それはちょうど人々の腹中に何かが燃えていて、その煙りが間歇かんけつ的に口から出て来るように見えた。
踊る地平線:11 白い謝肉祭 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
けれども、激しい恐怖とそれに伴ふ精神的な疲労とから一週間ほども高熱と悪夢に苦しんだ真弓は、まだその後を引いてゐる間歇かんけつ的な発熱のために、ものうい臥床のうへで暮らす日が多かつた。
水と砂 (新字旧仮名) / 神西清(著)
間歇かんけつ的に小止みにはなったが、しかしそんなときは霧がひどくて、近くの山々すら殆どその姿を見せずにいた。
楡の家 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
もとより彼女がそういう感情をもつのは、同じ戯曲の同じ場所ででも二度とはほとんど起こることのない、きわめてまれな間歇かんけつ的な閃光せんこうによってであった。
つまり、艇長には、固有の発作があったので、たしか僕は、それが間歇かんけつ跛行はこう症だと思うのですが……
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
あなたは『間歇かんけつ遺伝』という事を知ってるワネ、そうそうあなたは大学生さんでしたっけ、法科? 理科? それとも医科? ……そう、まだ文科へ入ったばかりのホヤホヤなの、可愛らしいわけネ
焔の中に歌う (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
それは間歇かんけつ的で乱雑で目的がなかった。書くことをか? だれのために書くのか? 人間のためにか? しかし彼は激しい人間ぎらいの危機にさしかかっていた。
そうしてその微妙びみょう間歇かんけつが、ほとんど足が地につかないような歩調で歩きつつある私の中に、いつのまにか、ほとんど音楽の与えるような一種のリズミカルな効果を生じさせていた。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
それは、廃堂の床に、基督教の表象とされている魚という文字が、ものもあろうに希臘ギリシャ語で現われたのだった。しかし、それはたぶん、鉱泉脈の間歇かんけつ噴気によるものならんと云われている。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
自分では、漠然とした間歇かんけつ的なおののきを感ずるばかりだった。そのうえ、日々の仕事や好ましくない職業などの煩いのために、彼の愛はある程度まで維持されていた。
が妙に間歇かんけつ的となってきた。突然盛んに流れ出すかと思うと、つぎには地下に消えてしまった。クリストフはそれに気を止めなかった。そんなことはどうでもよかった。
彼には真理が一つ必要だった。そしてこのカトリック教的真理は、行動の要求や、フランス中流人の間歇かんけつ遺伝や、自由にたいする倦怠けんたいなどと、うまく調子が合ったのである。
つっ立って眼を開きながら生活の一瞬のうちにも、いかに長時日の夢を人はなし得ることだろう!——それに労働者の仕事は、間歇かんけつ的な考えにかなりよく調和するものである。
それも限られたきわめて間歇かんけつ的な感化力だったが、説明しがたいだけにいっそう著しいものだった。クリストフはジョルジュやその仲間の者らが猛烈に反抗してる旧時代に属していた。
ナタン夫人のうちには、ほんとうの親切と過度の俗臭とが同じ割合に混ざり合っていた。二人ともアントアネットにたいして、騒々しい真実なしかも間歇かんけつ的な同情をやたらに見せつけた。
ほんとうをいえば、彼らは間歇かんけつ的にしか親切ではなかったのである。