長袴ながばかま)” の例文
松の内の登城ですから、無論式服、熨斗目のしめかみしも長袴ながばかま、袴のくくりは大玄関の板敷へ上がるとすぐに下ろしてすそを曳くのが通例でした。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
和服に長袴ながばかまをつけた少女が八、九人、正面の高い壇を中心にして、或る者は右手を高くあげ、或る者は胸に腕をくんで、群像のように立っていた——が、一せいに
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
が、長袴ながばかまに附いた一片の埃を払い落したほどの関心も持たず、その年の三月には早江戸の桜の下に、奥方の厳しい眼を逃れ乍ら、あたらしい歓楽を追う大膳正だったのです。
『二十四孝』十種香じっしゅこうの幕明を見たるものは必ずやかたの階段に長く垂敷たれしきたる勝頼かつより長袴ながばかまの美しさを忘れざるべし。浅倉当五あさくらとうごが雪の子別れには窓の格子こそに恩愛のしがらみなれ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
謀叛人むほんにんが降つて湧いて、まる取詰とりつめたやうな騒動だ。将軍の住居すまいは大奥まで湧上わきあがつた。長袴ながばかますべる、上下かみしも蹴躓けつまずく、茶坊主ちゃぼうずは転ぶ、女中は泣く。追取刀おっとりがたなやり薙刀なぎなた。そのうち騎馬で乗出のりだした。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
服は長袴ながばかま、各自が馬代の銀を献上し、平伏のままで謁した。
そこらに時々見受けるのは、池田候とか、伊達候とか、松平なにがしとか、いずれものり付けになったような長袴ながばかまの静粛な去来のみです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……だが見よ、やがて、幾年か後には、その家康に長袴ながばかまをはかせて、秀吉のまえに、礼をとらせてみせるであろう
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それがしが長袖長袴ながばかまなど着て、のそのそしている間に、一朝、先頃の如き事変でも勃発したらいかがなさる。旧例故実は、しばらくの間、旧人のあなた方の中でお守りあればよい
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それと、暑さとで、桐紋きりもんの式服やら長袴ながばかまやら、蹴るように脱ぎすてて
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)