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錵
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にえ
ふりがな文庫
“
錵
(
にえ
)” の例文
痣
(
あざ
)
のようにあった、うすい
錆
(
さび
)
の
斑紋
(
はんもん
)
も消えているし、血あぶらにかくれていた
錵
(
にえ
)
も、
朧夜
(
おぼろよ
)
の空のように、ぼうっと美しく現れていた。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「いいやいや。
錵
(
にえ
)
乱
(
みだ
)
れて刃みだれざるは上作なりと申す。およそ
直刃
(
すぐは
)
に足なく、位よきは
包永
(
かねなが
)
、
新藤五
(
しんとうご
)
、
千手院
(
せんじゅいん
)
、
粟田口
(
あわたぐち
)
——。」
寛永相合傘
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
盲目
(
めくら
)
であった竜之助には、その刀の肌を見ることができません。
錵
(
にえ
)
も匂いもそれと見て取ることのできるはずがございません。けれども
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「鍛えは柾目、忠の先細く、
鋩子
(
ぼうし
)
詰まって
錵
(
にえ
)
おだやか、少し尖った乱れの先、切れそうだな、切れてくれなくては困る」
首頂戴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
……薫るのなんぞ何のその、酒の
冷
(
ひや
)
の気を浴びて、正宗を、
壜
(
びん
)
の口の
切味
(
きれあじ
)
や、
錵
(
にえ
)
も匂も
金色
(
こんじき
)
に、梅を、
朧
(
おぼろ
)
に
湛
(
たた
)
えつつ、ぐいと飲み、ぐいと
煽
(
あお
)
った——立続けた。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
取りあげて
錵
(
にえ
)
、におい、こしらえのぐあいを、
巨細
(
こさい
)
に見改めていましたが、その目が
鍔元
(
つばもと
)
へ注がれると同時に、ふふん——という軽い微笑が名人の口にほころびました。
右門捕物帖:20 千柿の鍔
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
大湾
(
おおのた
)
れに
錵
(
にえ
)
が
優
(
すぐ
)
れて多く匂いの深いところ、則重の名作と誰も言ってみたいが、それよりはずんと高尚で且つ古いものじゃ
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
手——盃に觸れる時、心に、日本刀のあの冴えたる斬れ味や
錵
(
にえ
)
やみだれを思うて見る。色、香、味。さながら銘刀を飮むやうに美味くなければならない。
折々の記
(旧字旧仮名)
/
吉川英治
(著)
大和
(
やまと
)
に住していた天国の作の、二尺三寸の刀身の、何んと、部屋の暗さの中に、
煌々
(
こうこう
)
たる光を放していることか! その刀身の姿は細く、肌は板目で、女性を
連想
(
おも
)
わせるほどに優美であり、
錵
(
にえ
)
多く
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
血脂
(
ちあぶら
)
は古く
錵
(
にえ
)
の色は
生
(
なま
)
新しい、そぼろ
助広
(
すけひろ
)
の一刀をギラリと抜いて
鞘
(
さや
)
を縁側へ残し、
右手
(
めて
)
の
雫
(
しずく
)
の垂れそうなのを引っさげて、しずしずと
椎
(
しい
)
の下へ歩みだした。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「あ、では
五
(
ぐ
)
の
目
(
め
)
乱
(
みだ
)
れになっているのだろう。それから、
錵
(
にえ
)
と
匂
(
にお
)
い、それは、あなたにはわかるまいが……銘があるとの話、その銘は何という名か覚えていますか」
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
行燈
(
あんどん
)
の光を流した
刃
(
やいば
)
の
錵
(
にえ
)
、
切
(
き
)
ッ
尖
(
さき
)
の来るより早く弥助の眼を射て、「おのれ!」パッと片足に蹴返した。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「見事な
大湾
(
おおのた
)
れ、
錵
(
にえ
)
が
優
(
すぐ
)
れて匂いが深いこと、見ているうちになんとも言われぬ奥床しさ」
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
抜いてあるまま、その鞘と
柄
(
つか
)
とを、お綱の手へ返すと、お綱もそれをうけてややしばらく、深味のある
錵
(
にえ
)
の色に、ジッと心を吸いこませたが、やがてわれを忘れかけたように
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「二尺四寸、
大湾
(
おおのた
)
れで
錵
(
にえ
)
と匂いの
奥床
(
おくゆか
)
しいこと、とうてい言語には述べ尽されぬ」
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
しかも刃もなく、
錵
(
にえ
)
もなく光もない
竹杖
(
ちくじょう
)
が、ひと度
髯
(
ひげ
)
の重左に
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
錵
漢検1級
部首:⾦
15画