逃亡かけおち)” の例文
逃亡かけおちをしてもこの関係を忘れる事は出来まいとも考えた。また忘れる事が出来るだろうとも考えた。要するに、して見なければ分らないと考えた。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
のこらず呼出よびいだされければ紙屑買共は不測ふしぎに思ひ中には少しづつ内證物ないしようものなど買し心覺こゝろおぼえのある者は思ひすごしよりにはか逃亡かけおち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
早速さつそく小音曲師せうおんぎよくし逃亡かけおちはなしをすると、木下きのしたさんのはるゝには、「大方おほかたそれは、有島ありしまさんのいけかへつたのでせう。かへる隨分ずゐぶんとほくからももとつちかへつてます。」とつてはなされた。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
イヤあのばうさんに困つてるのだよ、店請たなうけがあつたんだけれど其店請そのたなうけ何所どつか逃亡かけおちをしてしまつたので、今にもアノばうさんにねむられると係合かゝりあひだと思つて誠にあんじてるのサ。
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
何様どうしてやるにも遣り様なく、困りきつて逃亡かけおちとまで思つたところを、黙つて親方から療治手当も為てやつて下された上、かけら半分叱言らしいことをわつちに云はれず、たゞ物和しく
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
叔母に言うことができないとすれば、お幸と二人で土地を逃げる他に仕方がないと一度は逃亡かけおちの仕度をして武の家に出かけましたが、それもイザとなって踏み出すことができませんでした。
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
しかし自分は前に云う通り相当の身分のある親を持って朝夕に事を欠かぬ身分であるから生家うちにいては自滅しようがない。どうしても逃亡かけおちが必要である。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
逃亡かけおち致せしぞ及靱負ゆきへは其後如何いかゞなせしやとたづねらるゝに平左衞門其儀は只今たゞいま申上し通り稻葉殿よりおくられし金子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ああ悪かった気の毒なことをしたと後悔してもこっちも貧的、どうしてやるにもやりようなく、困りきって逃亡かけおちとまで思ったところを、黙って親方から療治手当もしてやって下された上
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
した逃亡かけおちして來りし處喜八が右の一件に付兩人共生ては居られぬ其原そのもとの起りは吉之助殿初瀬留が故なりとてすでくびれんとするを漸々やう/\なだすかおき何卒なにとぞ喜八が罪を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)