づら)” の例文
川音と話声とまじるのでひどく聞きづらくはあるが、話のうちに自分の名が聞えたので、おのずと聞きはずすまいと思って耳を立てて聞くと
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
千穂子は今は一日が長くて、住みづらかった。しゅうとめぜんをつくっておくへ持って行くと、姑のまつは薄目うすめを明けたままねむっていた。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
あつときにはさつぱりした浴衣ゆかたけてることも出來できた。其處そこかれにはづらところでもなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
どんなに書きづらかろうとも、また書き損なって真っ黒々の消しだらけにしようとも、なぜもっともっとせっせと片仮名のハガキや手紙を出さなかったろう? ……と。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
この最終の自筆はシドロモドロでづらいが、手捜てさぐりにしては形も整って七行に書かれている。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
そう云われると僕はあなたのお心持をお察しして、云いづらくなって来るんですが、現に昨夜は僕もその場に居合わせたんだし、大体熊谷の云うことは本当だろうと思われるんです。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
どうかして泣かせてやろうとくすぐったり辛子からしめさせるような故意の痕跡が見えいたら定めし御聴きづらいことで、ために芸術品として見たる私の講演は大いに価値を損ずるごとく
文芸と道徳 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「砂糖なんかいらねえぜ、おら。薬だもの、づらいのなんか、仕方がねえ。」
山茶花 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
「内地は段々住みづらくなつてるさうですが、こゝにゐれば極楽ごくらくみたいでせう?」
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)