かがやき)” の例文
そこで許宣は舗を出て、銭塘門せんとうもんのほうへと往った。初夏のようなかがやきの強いの照る日で、仏寺に往き墓参に往く男女が街路にあふれていた。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そうしてそのにはあたたか健全けんぜんかがやきがある、かれはニキタをのぞくのほかは、たれたいしても親切しんせつで、同情どうじょうがあって、謙遜けんそんであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
一つはそれも長屋うちに憎まれるもといであった滝太郎が、さも嬉しげに見て、じっとみつめた、星のような一双のまなこの異様なかがやきは、お兼が黒い目でにらんでおいた。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
併し、気のせいか彼女の美しいかがやきの顔に、不安の影がさっと通った様に思えた。
偽刑事 (新字新仮名) / 川田功(著)
黒い眼が怪しいかがやきを帯びて、頬の色は電気灯のもとでは少し熱過ぎる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
摺鉢すりばちの底のような窪地くぼちになった庭の前には薬研やげんのようにえぐれた渓川たにがわが流れて、もう七つさがりのかがやきのないが渓川の前方むこうに在る山をしずかに染めていた。
山寺の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
鉱物、一切の元素が、一々ひとつずつ微細なる活字となって、しかも、各々おのおの五色のかがやきを放ち、名詞、代名詞、動詞、助動詞、主客、句読くとう、いずれも個々別々、七彩に照って、かく開きました真白まっしろペエジの上へ
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
空気は冷たかったがしずかけむったように見える日で、かがやきのない夕陽がそのまわりをほっかりと照らしていた。彼は気がいてそのの光にやった眼をすぐそこの建物にやった。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)