躯幹からだ)” の例文
余が修善寺しゅぜんじで生死の間に迷うほどの心細い病み方をしていた時、池辺君はいつもの通りの長大な躯幹からだを東京から運んで来て、余の枕辺まくらべすわった。
三山居士 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
什麽どんなことするつて泥棒どろぼうはしねえぞ、勘次かんじれた目尻めじりに一しゆ凄味すごみつておつたがつたとき卯平うへいはのつそりと戸口とぐちおほきな躯幹からだはこばせた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
髪を若衆髷に取上げた躯幹からだの小造りの少年武士が彼の方へ横顔を見せ、部屋の真中に端然と坐わり、巧みな手並で茶を立てている。見覚えの無い武士である。
赤格子九郎右衛門 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
躯幹からだ、脚部と上から下へ順々に板に刺したって、それがすべて肉体とはすはす、一分の隙に娘を避けて板に突き立つものだから、こんどは一同、ふうッと感服の吐息をもらして
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
木八刺ぼくはつらは西域の人で、あざな西瑛せいえい、その躯幹からだが大きいので、長西瑛と綽名あだなされていた。
卯平うへいがのつそりとおほきな躯幹からだてたそば向日葵ひまはりことごとそむいて昂然かうぜんとしてつてる。向日葵ひまはりつぼみ非常ひじやうふくれて黄色きいろつてから卯平うへいゑたのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
つぎ午餐過ひるすぎ卯平うへい使つかひともにのつそりと長大ちやうだい躯幹からだおもて戸口とぐちはこばせた。かれしきゐまたぐとともに、そのときはもうたゞいたい/\というて泣訴きふそして病人びやうにんこゑいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)