がお)” の例文
その下豊しもぶくれが少し過ぎてほおのあたりの肉今や落ちんかと危ぶまるるに、ちょっぽりとあいた口は閉ずるも面倒といいがおに始終洞門どうもんを形づくり
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
行手には唐人とうじんかむりを見る様に一寸青黒いあたまの上の頭をかぶった愛宕山あたごやまが、此辺一帯の帝王がおして見下ろして居る。御室おむろでしばらく車を下りる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
一人ひとりの旅の婦人に対して船の中の男の心がどういうふうに動いているかをその写真一枚が語りがおだった、葉子はなんという事なしに小さな皮肉な笑いを口びるの所に浮かべていた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
塗薬とやくと、分泌物ぶんぴぶつと、血と、焼け灰のぬらつく死にがおのかげで
原爆詩集 (新字新仮名) / 峠三吉(著)
くずの葉のうらみがおなる細雨かな
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
新涼しんりょうの驚きがおきたりけり
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
ある時、トラが何ものかと相対あいたいがおに、芝生にすわって居るので、のぞいて見たら、トグロを巻いた地もぐりが頭をちゞめて寄らばたんと眼を怒らして居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
欲には酌人しゃくにんがちと無意気ぶいきと思いがおに、しかし愉快らしく、さいのおすみの顔じろりと見て、まず三四杯かたぶくるところに、おんなて来し新聞の号外ランプの光にてらし見つ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
四五日しごんち前——」と言いかけしが、老爺じじいはふと今の関係を思いでて、言い過ぎはせざりしかと思いがおにたちまち口をつぐみぬ。それと感ぜし武男は思わず顔をあからめたり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
白は纏綿てんめんとして後になり先きになり、果ては主人の足下に駆けて来て、一方の眼に牝犬を見、一方の眼に主人を見上げ、引きとめて呉れ、媒妁なかだちして下さいと云いがおにクンクン鳴いたが
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)