“詑(わび)” の例文
勘次(かんじ)はそれでも他(た)に分別(ふんべつ)もないので仕方(しかた)なしに桑畑(くはばたけ)を越(こえ)て南(みなみ)へ詑(わび)を頼(たの)みに行(い)つた。彼(かれ)は古(ふる)い菅笠(すげがさ)を一寸(ちよつと)頭(あたま)へ翳(かざ)して首(くび)を蹙(ちゞ)めて行(い)つた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
で、間に取成してくれい、詑(わび)を言うてくれい、とのお嘱(たのみ)ぢやけれど、それは僕は為(せ)ん。為んのは、間に対してどうも出来んのぢやから。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ある下婢はまことに人の好(い)いものでは有つたが、しかし心の浮々とした女で、長く奉公する間には幾度となく失策(しくじり)をして、その度に詑(わび)を入れて来た。
犬 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
その夜(よ)は慙恨(ざんこん)の情(じょう)に駆(か)られて、一睡(すい)だもせず、翌朝(よくちょう)遂(つい)に意(い)を决(けっ)して、局長(きょくちょう)の所(ところ)へと詑(わび)に出掛(でかけ)る。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
蝶吉に肱鉄砲(ひじ)を食ッて、鳶頭(かしら)に懐中の駒下駄を焼かれた上、人の妓(こども)を食おうとする、獅子身中の虫だとあって、内の姉御(あねご)に御勘気を蒙(こうむ)ったのを、平蜘蛛(ひらぐも)で詑(わび)を入れて、以来きっと心得まするで
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さうして僕に詑(わび)を為てくれ、それが成らずば、君に一遍逢せてくれ、と縋(すが)つて頼むのじやな、けれど僕も思ふところが有るから拒絶はした。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
其夜(そのよ)は慙恨(ざんこん)の情(じやう)に驅(か)られて、一睡(すゐ)だも爲(せ)ず、翌朝(よくてう)遂(つひ)に意(い)を决(けつ)して、局長(きよくちやう)の所(ところ)へと詑(わび)に出掛(でかけ)る。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
やがて追い着いて手を引くまで、詑(わび)をする気でこうしている。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「もう二度と私はお目には掛りませんから、今日のところはどうとも堪忍して、打(ぶ)つなり、殴(たた)くなり貫一さんの勝手にして、さうして少小(すこし)でも機嫌(きげん)を直して、私のお詑(わび)に来た訳を聞いて下さい」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)