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とは
数日前より
鰐淵が家は
燈点る頃を期して、
何処より来るとも知らぬ一人の
老女に
訪るるが例となりぬ。
曲輪の
裏二
階眼隱し板の
透間より
仄かに見ゆる
家毎の
燈しお安は
不審三次に向ひ爰は何と申所にやまた
那賑かのは何所なりと
訪れて三次は
振返り
那か
那がお江戸の吉原さお文さんは
那内に居られるのだ
而お富さんの居るお屋敷もたんとは
離れて居らぬ故二人に今夜は
逢せて
進んと
言れてお安は
内に
在れば
必ず
筆を取つて書いて
居る
好者と、
巌谷から
噂の有つた
其人で、
始て社に
訪れた時は
紺羅紗の
古羽織に
托鉢僧のやうな
大笠を
冠つて、
六歩を
踏むやうな
手付をして
振込んで来たのです