裨益ひえき)” の例文
翰は平生手紙をかくにも、むずかしい漢文を用いて、同輩を困らせては喜んでいたが、それは他日おおいにわたしを裨益ひえきする所となった。
梅雨晴 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ゆえに筆者はにんじゅつの真なる発祥と、その流祖の煙滅えんめつひんせる事跡を記し、もって世道人心に裨益ひえきするところあらんと決心したのである。
ゆえに、これを講述するは、哲学ならびに心理学研究に志ある者に、裨益ひえきするところあるは明らかなり。これ、余が妖怪学の講義を始むるゆえんなり。
妖怪学 (新字新仮名) / 井上円了(著)
これをかゆとしまた鰹節かつぶし煮出にだしてもちうれば大に裨益ひえきあればとて、即時そくじしもべせておくられたるなど、余は感泣かんきゅうくことあたわず、涕涙ているいしばしばうるおしたり。
されば追々地方的及び時代的の差別が明かに成来って琉球語の研究が経緯されるに至ると、我本土の国語の源流を究める上に大なる裨益ひえきをなすことは疑ない。
私学校は人を教えて世の裨益ひえきをなすべき術に富めるといえども、この術を実地に施すべき財に貧なり。
彼はこの問題について、この先輩の失望を慰めうるのみならず、将来の精神的発達に『必ず』裨益ひえきしうるような、進歩主義的で宣伝価値のある意見を持っていたのである。
あえて世道人心を裨益ひえきしようなどという、大それた自惚うぬぼれは持っていないまでも、娯楽に重点を置き過ぎ、読者の好奇心におもねって、人の子を毒するようなことでは、遅かれ早かれ
またいわゆる世道人心を益するという真に道徳的裨益ひえきの意味でいうならば、その行為が内面的に真の善行でなかったならばそは単に善行を助くる手段であって、善行其者そのものではない
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
無垢むくの魂の発展の方向を決定するに裨益ひえきすること少なからぬものがあると信じる。
『グリム童話集』序 (新字新仮名) / 金田鬼一(著)
もっと閑があり、金があったら、シナへ行って僧堂の現状から、その地における歴史、それから日本僧堂の沿革などを調べて見たら、何か現時の精神教育に裨益ひえきすることもあると信ずる。
僧堂教育論 (新字新仮名) / 鈴木大拙(著)
たとへば三歳の児童の用語、四歳の児童の用語、乃至ないし、五歳、六歳、七歳とその年齢に従ひて用語表を作らば教科書を作るの参考になるのみならず、児童心理の研究にも裨益ひえきする事論なし。
明治卅三年十月十五日記事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
いやしくも文筆を以て世に立つものは社会を感化するという心でなければならん。世道せどう人心に裨益ひえきするという精神でなければならん。それを今の世には悪くすると大間違いの心がけがある。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
印刷に附して世におおやけにせしに、すでに数千部をいだすにいたれり、ここにおいて余はその多少世道人心を裨益ひえきすることもあるを信じ、今また多くの訂正を加えて、再版に附することとはなしぬ
後世への最大遺物 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
二十五円の先輩は時稀ときたま上京すると母校を訪れることを忘れなかった。私達は卒業が迫っているから、彼等の経験によって裨益ひえきしようと思って、種々いろいろと当って見る。皆相応得意でメートルを上げて行く。
首席と末席 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
浩大かうだいなる裨益ひえきあることを信ずるなり。
国民と思想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
かくの如く浮世絵画工中北斎のもっとも泰西人に尊重せられし所以ゆえんは後期印象派の勃興に裨益ひえきする所多かりしがためなり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ここにおいて、余は妖怪学を講じて世人の惑いを解き、愚民をして無益に安心税を支出するの憂いなからしめんと欲す。これまた、国家経済においても、多少裨益ひえきするところあるべしと信ずるなり。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
「罷り間違えば、現代の青年を多少裨益ひえきしないとも限らない」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「いや、読者以外にも裨益ひえきするものがございます」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)