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藥箱
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くすりばこ
翌日は
別當の
好意で、
玄竹は
藥箱を
葵の
紋の
附いた
兩掛けに
納め、『
多田院御用』の
札を、
兩掛けの
前の
方の
蓋に
立てて
貰つた。
みんなごろ/\してんで
俺ればかり
藥箱持つて
醫者の
送迎えしたな、
隣近所一軒毎役にや
立たねえだから、いや
本當だよ、
俺ら十五
日下痢つて
癒つたが
俺ら
強かつたかんな、いや
強えとも
全く
それで
直ぐ
準備をして、
下男に
藥箱を
擔がせ、
多田院からの
迎への
者を
先きに
立てて、
玄竹はぶら/\と
北野から
能勢街道を
池田の
方へ
歩いた。
さうして
下男には、
菱形の四
角へ『
多』の
字の
合印しの
附いた
法被を
着せてくれた。
兩掛けの一
方には
藥箱を
納め、
他の一
方には
土産物が
入つてゐた。