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蒼穹
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あおぞら
ふりがな文庫
“
蒼穹
(
あおぞら
)” の例文
広い縁の向うに
泉水
(
せんすい
)
の見える部屋だ。庭いっぱい、
黄金
(
こがね
)
いろの液体のような日光が
躍
(
おど
)
って、
霜枯
(
しもが
)
れの草の葉が
蒼穹
(
あおぞら
)
の色を映している。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そして不思議なことに、その
蒼穹
(
あおぞら
)
に小さな美しい星が一つきらきらとふるえているのを見て、爽やかな気持がしたのを覚えています
十時五十分の急行
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
爆音は総ての忌わしい記憶を打消して流れ、仰ぐ無限の
蒼穹
(
あおぞら
)
、その中には彼の醜い容貌を気にする何物もないのだ。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
すべてが
噎
(
むせ
)
るようである。また
漲
(
みなぎ
)
るようである。ここで
蒼穹
(
あおぞら
)
は高い空間ではなく、色彩と密度と重量をもって、すぐ皮膚に圧触して来る濃い液体である。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
大平
(
おおだいら
)
街道だ。道ばたの切石に腰をおろして、こうした山歩きの終わりにはだれもがするように悠々とパイプに火を点じて、FINE の煙文字を
蒼穹
(
あおぞら
)
に書いた。
二つの松川
(新字新仮名)
/
細井吉造
(著)
▼ もっと見る
雲は低く
灰汁
(
あく
)
を
漲
(
みなぎ
)
らして、
蒼穹
(
あおぞら
)
の奥、黒く流るる処、げに
直顕
(
ちょっけん
)
せる飛行機の、一万里の荒海、八千里の
曠野
(
あらの
)
の
五月闇
(
さつきやみ
)
を、
一閃
(
いっせん
)
し、
掠
(
かす
)
め去って、飛ぶに似て、似ぬものよ。
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
何の跼蹐ぞ! あるものはただ自由な天と地であり胸を張って大地に立つ
蒼穹
(
あおぞら
)
への呼吸であり、魂の昂揚であり、虚飾もなければ虚偽もなく、いわんや忍耐もなければ卑屈もない。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
生命
(
いのち
)
は愛なれば愛するものの
失
(
う
)
せしは余自身の失せしなり、この完全最美なる
造化
(
ぞうか
)
、その
幾回
(
いくたび
)
となく余の心をして絶大無限の思想界に逍遙せしめし千万の
不滅燈
(
ふめつとう
)
を以て照されたる
蒼穹
(
あおぞら
)
も
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
しかも私はそのとき、
唇
(
くち
)
に触れるほど近く頭上におっかぶさった二枚の
板片
(
いたぎれ
)
の間から、ぽっちりと静かに澄みきった
蒼穹
(
あおぞら
)
を眺めていました。
十時五十分の急行
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
フリュートの音が、ひょろひょろと
蒼穹
(
あおぞら
)
に消えると、その合間合間に、乾からびた木戸番の「呼び込み」が、座員の心をも、何かそわそわさせるように、響いて来た。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
雛の
微笑
(
ほほえみ
)
さえ、
蒼穹
(
あおぞら
)
に、目に
浮
(
うか
)
んだ。金剛神の大草鞋は、宙を踏んで、渠を坂道へ
橇
(
そ
)
り落した。
夫人利生記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
八つを告げる
回向院
(
えこういん
)
の鐘の音が、
桜花
(
はな
)
を映して悩ましく霞んだ
蒼穹
(
あおぞら
)
へ吸われるように消えてしまうと、落着きのわるい床几のうえで釘抜藤吉は大っぴらに一つ
欠伸
(
あくび
)
を洩らした。
釘抜藤吉捕物覚書:07 怪談抜地獄
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
右手彼方には
階
(
きざはし
)
高く大理石の円柱林立して、エフィゲニウス邸の大殿堂が空を圧して
聳
(
そび
)
え立ち、陽光は
煦々
(
くく
)
として建物を
蒼穹
(
あおぞら
)
の中に浮き立たせ、ペンを
軋
(
きし
)
ませている私の指先に戯れ
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
蒼
漢検準1級
部首:⾋
13画
穹
漢検1級
部首:⽳
8画
“蒼”で始まる語句
蒼
蒼白
蒼空
蒼蠅
蒼黒
蒼褪
蒼然
蒼々
蒼味
蒼茫