荒筵あらむしろ)” の例文
枕から見渡す畳の上、羽虫の影が点々としている下に、倒屏風さかさびょうぶが立ててあるのが、第一に与惣次の眼に入った。寝ている敷物はいつしか荒筵あらむしろに変っている。
荒筵あらむしろでもあることか、死骸を包んだのは真新しい備後表、縛った縄は、荷造り用のたくましい麻縄です。
荒筵あらむしろを敷いてあるんでございますよ、そこらは一面にすすぼって、土間もかびが生えるように、じくじくして、隅の方に、お神さんと同じ色の真蒼まっさおあかりが、ちょろちょろとともれておりました。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
片側はなめらかであるが、裏側はずいぶんざらざらして荒筵あらむしろのような縞目しまめが目立って見える。しかし日光に透かして見るとこれとはまた独立な、もっと細かく規則正しいすだれのような縞目が見える。
浅草紙 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
山内家の紋を染めた幕を引き廻した中に、四本の竹竿たけざおてて、上にとまいてある。地面には荒筵あらむしろ二枚の上に、新しい畳二枚を裏がえしに敷き、それを白木綿でおおい、更に毛氈もうせん一枚をかさねてある。
堺事件 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ずっと向こうに数枚の荒筵あらむしろが、つなぎ合わされて垂らしてあった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そこの土間には荒筵あらむしろが敷かれてあった。
半七捕物帳:66 地蔵は踊る (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
荒筵あらむしろでもあることか、死骸を包んだのは眞新しい備後表、縛つた繩は、荷造用のたくましい麻繩です。
お蔦が足をすべらせないように木で張った梯子段はしごだんをおり切ると、眼の前の二間ほどの所に、荒筵あらむしろが二枚だらりと下がっていて、その目を通して、何やら黄色い光が、地獄の夢のように
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
話に聴いた、青色のその燈火ともしび、その台、その荒筵あらむしろ、その四辺あたりの物の気勢けはい
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
裏木戸寄りの涼み台の上に水死人を載せて、さすがに荒筵あらむしろは遠慮したらしく、浴衣を掛けてあるのを取ると、痩せた中老人の死骸が、秋の陽の下に浅ましくさらされるのでした。
わたくしはこの御門を出るとすぐに殺されてしまいますと大声をあげると、人命に関するとあってはお上でも容易ならずと見て、はじめてここにお取上げになり、荒筵あらむしろのうえに坐らせられて
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
裏木戸寄りの凉み臺の上に水死人を載せて、さすがに荒筵あらむしろは遠慮したらしく、浴衣を掛けてあるのを取ると、せた中老人の死骸が、秋の陽の下に淺ましくさらされるのでした。
庭先に番手桶ばんておけ荒筵あらむしろを敷いて、その上の枝ぶりの良い松にり上げたのは、半裸体の美女。
庭先に番手桶ばんてをけ荒筵あらむしろを敷いて、その上の枝ぶりの良い松にり上げたのは、半裸體の美女。
赤井左門から命令があつたものか、庭先には高張提灯たかはりちやうちんをかゝげ、番手桶を積み荒筵あらむしろを敷き、俄か事乍らすべてお白洲しらす其儘に作つて、往來に向いた庭木戸を眞一文字に開かせました。
この邊を持場にしてゐる石原の利助の子分達に挨拶されながら、平次と八五郎は、死骸を引場げてある、河岸かしの石疊の上にしやがみ込んで、わびしくも上へ掛けた、荒筵あらむしろを剥ぎました。
赤井左門から命令があったものか、庭先には高張提灯たかはりぢょうちんをかかげ、番手桶ばんておけを積み荒筵あらむしろを敷き、にわか事ながらすべてお白洲しらすそのままに作って、往来に向いた庭木戸を真一文字に開かせました。
中に入ると、見物はバラリと五十人ばかり、草の上に荒筵あらむしろを敷き、その上に茣蓙ござを敷いて、下足は銘々持ち、芝居は何やら物々しく展開して居り、見物は固唾を呑んでそれに陶醉して居る樣子です。