草紙そうし)” の例文
『おもろ草紙そうし』を見てもわかるように、勝連が当時の文化の中心であったことは大和やまとの鎌倉のごとしと歌われていた通りであった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
小野おの小町こまち几帳きちょうの陰に草紙そうしを読んでいる。そこへ突然黄泉よみ使つかいが現れる。黄泉の使は色の黒い若者。しかも耳はうさぎの耳である。
二人小町 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その時の吉の草紙そうしの上には、字が一字も見あたらないで、宮の前の高麗狗こまいぬの顔にも似ていれば、また人間の顔にも似つかわしい三つの顔が書いてあった。
笑われた子 (新字新仮名) / 横光利一(著)
内へ帰ると早速、夕餉ゆうげすまし、一寸ちょいと着換きかへ、糸、犬、いかり、などを書いた、読本どくほんを一冊、草紙そうしのやうに引提ひっさげて、母様おっかさんに、帯の結目むすびめトンたたかれると、すぐ戸外おもてへ。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「いいえ、あの団扇の隣りに懸かっているのは……。あれはなんですえ。お草紙そうしのようですね」
半七捕物帳:35 半七先生 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
柳亭種彦は昔の杓子のはいたく曲っていたものだという考証をして、『もっとも草紙そうし』のまがれる物品々の段に「大工のかねや、蔵のかぎ、檜物屋ひものやの仕事、なべのつる、おたがじやく」
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
用いてそのまゝに謄写うつしとりて草紙そうしとなしたるを見侍みはべるに通篇つうへん俚言りげん俗語ぞくごことばのみを
怪談牡丹灯籠:01 序 (新字新仮名) / 坪内逍遥(著)
(ふろしき包みと草紙そうしとを投げ出し)おゝ寒い、さむい。(手に息を吹きかける)
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
読本をふところにして校堂に上るの小児が他の少女に対して互いにおもてあこうすることも、仮名を便りに草紙そうし読む幼な心に既に恋愛の何物なるかを想像することも、皆なこれ人生の順序にして
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
枯るゝ庭ものの草紙そうしにあるがごと
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
この儀来婆の儀来はギライカナイ、すなわち『おもろ草紙そうし』のニライカナイの転訛てんかであった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
手習い子は手ならい草紙そうしで習って、ときどきに清書草紙に書くのであるが、そのなかでも正月の書初かきぞめと、七月の七夕祭りとが、一年に二度の大清書おおぜいしょというので、正月には別に半紙にかいて
半七捕物帳:35 半七先生 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
誰にも好まれる草紙そうしと云えば、悲しい話にきまっているようです。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
(色白きいちごくいたる)まくら草紙そうしは憎い事を言った。
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)