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與兵衞
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よへゑ
盜賊人殺しなりと
訴へけれども吉三郎事は
豫て其方
娘菊と
密通致し
居娘より
貰ひて
與兵衞に
賣たりと云故
其段明白に
吟味せん
爲娘を呼出したり
其方此事を
大切に
取扱かふべしと申
付られ
其後差紙にて
金屋利兵衞娘菊伊勢屋三郎兵衞小
間物屋與兵衞旅籠屋
清兵衞雲源等殘らず呼出されしにお菊は
贈りし二
品故に
無實の
罪にて吉三郎
牢舍と聞あるにも
在れず
歎き
悲しむと
雖も此事云にも云れず然とて云ねば吉三郎が身の上を
怒ると雖
詮方なく頼み切たる
利兵衞斯の如き
心底なれば
當惑致したれども
斯繁昌の御當地に付如何樣にも
口過は
相成申べくと
存じ
其後は一
度も
相尋ね申さず
扨て
彼の
櫛簪の
儀は利兵衞娘菊より
内々貰ひ
母の病氣にて
貯へ
盡候故
與兵衞に賣て母の病氣
救ひ候なり
決して
盜しには候はず
何卒此段御賢察下され御免を