聞召きこしめ)” の例文
殿下は大佐と馬博士とから「ファラリイス」の駒の批評を聞召きこしめされ、やがて長靴のまま静々と御仮屋を下りて、親馬と駒とを御覧になる。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これなりとは聞召きこしめしたりけれど、いきおい既に定まりて、削奪の議を取る者のみ充満みちみちたりければ、高巍こうぎの説も用いられてみぬ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
信玄公聞召きこしめし、「さすがの浦野とも覚えぬことを申すものかな、それは車懸くるまがかりとて幾廻り目に旗本と敵の旗本と打合って一戦する時の軍法なり」
川中島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
帝も出産を聞召きこしめして、兵部卿の宮がはじめて父になった喜びのしるしをぜひとも贈るべきであると仰せになり、太刀たちを新王子に賜わった。九日も左大臣からの産養があった。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
三斎公聞召きこしめされ、某に仰せられ候はその方が申条一々もっとも至極しごくせり、たとい香木はとうとからずとも、このほうが求め参れと申しつけたる珍品ちんぴんに相違なければ大切と心得候事当然なり
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
中途で退出したことを聞召きこしめされて大いに御気色みけしきを損ぜられたので、浄蔵は深く勅勘ちょっかんの身をつゝしみ、三箇年の間横川よかわ首楞厳院しゅりょうごんいん籠居ろうきょして修練苦行の日を送ったと云うが、世間一般の人々は
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しずか聞召きこしめせ、色が白い。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
天皇は、その草稿を御嘉納あそばされ、新たに枢密院を設けられ、国家の元勲と練達の士とを集めて、逐条御諮詢、その審議を聞召きこしめさるゝこと八箇月に及んだ。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
宣宗せんそうぎたまいたる天子の、建文帝に対して如何いかんの感をやしたまえる。御史の密奏を聞召きこしめして、すなわ宦官かんがんの建文帝に親しくつかえたる者を召して実否を探らしめたもう。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
宮は御休息もなく四列の厩を一々案内させて、二時問余も大佐、馬博士を御相手に、二百頭の馬匹の性質、血統、遺伝などを聞召きこしめされ、すこしも御疲労のていに見えさせ給わないのです。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
松向寺殿聞召きこしめされ、某に仰せられ候は、その方が申条一々もっとも至極しごくなり、たとい香木は貴からずとも、このほうが求め参れと申つけたる珍品に相違なければ、大切と心得候事当然なり
内裏を襲はんとするを聞召きこしめされ、元弘げんこう元年八月二十四日、天皇は、にはかに宮中を出でさせられ、ついで二十七日笠置山に御潜幸遊ばされたが、北條氏は、足利尊氏あしかゞたかうぢ、金沢貞冬、大佛貞直おさらぎさだなほ等を将とし
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)