老爺おじい)” の例文
私ら中年者は中年の恋を露骨に歌います。それにしてももう少し物足りませんね。老爺おじいさんと……そして……フェヤセックスがいないから!
「云はんことか、お伊勢様のばちだ」と、宇賀の老爺おじいは小声でつぶやいておりましたが、やがて大祓おおばらいことばとなえだしました。
宇賀長者物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ある日、あたしは母の父の顔を穴のあくほどじっと見た。この老爺おじいさんは寺院おてらで見る大木魚おおもくぎょのような顔をしていた。
旧聞日本橋:08 木魚の顔 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
老爺おじいさんが彼方あっちへ御帰りなさるんだよ——種ちゃんも、新ちゃんも、サッサと早く歩きましょうネ」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
えゝ老爺おじいさん、お前さんに又此処でお目に懸るてえのは誠にふけえ御縁かと思ってるのよ……貴方あんたたしか四万の關善でお目に懸った橋本幸三郎さんてえお方でげしょう
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
今日は箱根塔沢とうのさわに隠居して居るあの老爺おじいさんのことで、中嶋三郎助は旧浦賀の与力よりき、箱館の戦争に父子共に討死した立派な武士で、その碑は今浦賀の公園にたってある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
一家のしまりをしている、四十六七になった、ぶよぶよ肥りの上さんと、一日小まめに体を動かしづめでいる老爺おじいさんとが、薄暗いその囲炉裏の側に、酒のお燗番かんばんをしたり、女中の指図さしずをしたりしていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
どうもあの老爺おじいさんに違いないのですが、あたくしもよく似た人があるものだと思って感心いたしましたが……
旧聞日本橋:08 木魚の顔 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
私は此の頃は誰が来ても身の懺悔をして若い時の悪事の話を致しますと、遊びに来る老爺おじいさんや老婆おばあさんも、おゝ/\そうだのう、悪い事は出来ないものだと云って
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
長者の傍にいる者は、壮い二人の女と、「宇賀の老爺おじい」と云う長者一門の老人でありました。
宇賀長者物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「皆な温順おとなしくしてお出——復た老爺おじいさんが御土産おみやを持って出て来ますぜ」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
安「だってサ血だらけな老爺おじいさんが降って来たからサ老爺さんの降るような天気じゃアねえのに」
今歳ことしの正月、長者が宇賀の老爺おじいれて、国司こくしたちに往って四五日逗留とうりゅうしている留守に、むすめは修験者の神秘におかされていたが、そのころになってその反動が起っておりました。
宇賀長者物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
木魚は小さいのは可愛らしいものであるが、大きなのがふとんを敷いて座っていると、かなりガクガクとした平たい四角である。老爺おじいさんの顔も大きな四角なお出額でこあごも張っている。
旧聞日本橋:08 木魚の顔 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
恭「何だかおらア知らねえけんど、勇助さんという老爺おじいさんを殺した事は知ってる」
木魚もくぎょの顔の老爺おじいさんが、あの額の上に丁字髷ちょんまげをのせて、短い体に黒ちりめんの羽織を着て、大小をさしていた姿も滑稽こっけいであったろうが、そういうまた老妻おばあさんも美事な出来栄できばえ人物ひとだった。
修「左様か、妙だなア剣術を習いたいというのは……老爺おじいさんは矢張やっぱり商人かえ」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
老妻おばあさん歿くなると、老爺おじいさんのあきらめていた硫黄熱がまた燃てきた。
老爺おじいさん待ちねえ、おめえの云うことは尤もだが、まア安心しねえ重三さんは去年の二月こッそり羽根田へお前を探しに往ったら、だしぬけに居なく成ったから、大方身でも投げて死んだろう
由「はい……おや旦那、何処かの老爺おじいさんが這入って来ましたよ」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)