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ひょうびょう
ふりがな文庫
“
縹緲
(
ひょうびょう
)” の例文
事が
娑婆
(
しゃば
)
世界の実事であり、いま説いていることが儒教の道徳観に
本
(
もと
)
づくとせば、
縹緲
(
ひょうびょう
)
幽遠な歌調でない方が却って調和するのである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
訶和郎の死体は、眼下に潜んだ
縹緲
(
ひょうびょう
)
とした森林の波頭の上で、数回の大円を描きながら、太陽の光にきらきらと輝きつつ沈黙した緑の中へ落下した。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
またある人は知りがたく、解しがたき故に無限の域に
儃佪
(
せんかい
)
して、
縹緲
(
ひょうびょう
)
のちまたに
彷徨
(
ほうこう
)
すると形容するかも知れぬ。何と云うも皆その人の自由である。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
午後三時頃と覚える薄日が急にさして、あたりを
真鍮色
(
しんちゅういろ
)
に明るくさせ、それが二人をどこの山路を踏み行くか判らないような
縹緲
(
ひょうびょう
)
とした気持にさせた。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そして眼はいつの間にか南の空に
縹緲
(
ひょうびょう
)
として
積翠
(
せきすい
)
を湛えた秩父の山奥深く迷い込んで行くのが常であった。
秩父の奥山
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
▼ もっと見る
北国の春の空色、青い青い海の水色、澄みわたった空と水とは藍を
溶
(
とか
)
したように濃淡相映じて
相連
(
あいつら
)
なる。望む限り、
縹緲
(
ひょうびょう
)
、地平線に白銀の
輝
(
ひかり
)
を放ち、
恍
(
こう
)
として夢を見るが如し。
面影:ハーン先生の一周忌に
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
一心不乱と云う事を、目に見えぬ怪力をかり、
縹緲
(
ひょうびょう
)
たる背景の前に写し出そうと考えて、この趣向を得た。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
固
(
もと
)
より内心に
確乎
(
かっこ
)
たる覚悟があって述べる事でないんだから、顔だけはしかつめらしいが、述べる事の内容は、すこぶる
赤毛布式
(
あかげっとしき
)
に
縹緲
(
ひょうびょう
)
とふわついていたに違ない。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「その時からしてがすでに
縹緲
(
ひょうびょう
)
たるものさ。
今日
(
こんにち
)
になって回顧するとまるで夢のようだ」
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
遥
(
はる
)
か向うには、
白銀
(
しろかね
)
の一筋に眼を射る高野川を
閃
(
ひら
)
めかして、左右は燃え
崩
(
くず
)
るるまでに濃く咲いた菜の花をべっとりと
擦
(
なす
)
り着けた背景には
薄紫
(
うすむらさき
)
の
遠山
(
えんざん
)
を
縹緲
(
ひょうびょう
)
のあなたに
描
(
えが
)
き出してある。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
追い懸けて来る過去を
逃
(
の
)
がるるは
雲紫
(
くもむらさき
)
に立ち
騰
(
のぼ
)
る
袖香炉
(
そでこうろ
)
の
煙
(
けぶ
)
る影に、
縹緲
(
ひょうびょう
)
の楽しみをこれぞと
見極
(
みきわ
)
むるひまもなく、
貪
(
むさ
)
ぼると云う名さえつけがたき、眼と眼のひたと行き逢いたる
一拶
(
いっさつ
)
に
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
端粛とは人間の活力の動かんとして、未だ動かざる姿と思う。動けばどう変化するか、
風雲
(
ふううん
)
か
雷霆
(
らいてい
)
か、見わけのつかぬところに
余韻
(
よいん
)
が
縹緲
(
ひょうびょう
)
と存するから
含蓄
(
がんちく
)
の
趣
(
おもむき
)
を
百世
(
ひゃくせい
)
の
後
(
のち
)
に伝うるのであろう。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「あの島か、いやに
縹緲
(
ひょうびょう
)
としているね。おおかた
竹生島
(
ちくぶしま
)
だろう」
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
合って自分に残るのは、
縹緲
(
ひょうびょう
)
とでも形容してよい気分であった。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“縹緲”の意味
《形容動詞》
対象がかすかではっきりしないさま。
見渡すかぎり広々しているさま。
(出典:Wiktionary)
縹
漢検1級
部首:⽷
17画
緲
漢検1級
部首:⽷
15画
“縹”で始まる語句
縹緻
縹渺
縹
縹色
縹致
縹雲
縹茫
縹眇
縹渺性
縹緻佳