ぼそ)” の例文
とうとう、少年は、くらがりの中にいるのが心ぼそくなってきた。日はもうとっくにれかけているのに、あかりがともらないのだ。
再び、かぼそい手で、重いかんぬきをゆすぶる。閂はびついたかすがいの中できしむ。それから、そいつを溝の奥まで騒々そうぞうしく押し込む。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
王子は少し心ぼそくなってきましたが、それでもかまわないとこたえました。そして二人はむこうの山の上へ行きました。もう、なんにも見えませんでした。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
節子さんは娘時代には、一たん半なくては、長いそでがとれなかったという脊高せいたかのっぽ、浜子は十貫にはどうしてもならなかったかぼそい小さな体だった。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
仇なる畜生めと病の中に父の腹立はらだち此怒りをなだめんにもなくより外の事もなく心ぼそさにあとや先昔はおん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「暁近くなりにけるなるべし、隣の家々、あやしきしづの声々めざましく、あはれ、いと寒しや、ことしこそ、なりはひに頼む所少く、田舎のかよひも思ひがけねば、いと心ぼそけれ、北殿きたどのこそ聞き給へや」
『新訳源氏物語』初版の序 (新字新仮名) / 上田敏(著)
かぞのこころぼそさや
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
こころぼそさを
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
やがてきゅうに、さびしい気味きみのわるい気がしてきて、心ぼそくなったが、そのとたんに、ああ、これはまた、どうしたことだろう。黒山のように人だかりがして、みんな目をまるくして見物けんぶつしている。