素行そこう)” の例文
難をいえば、犬千代は感情につよく、同僚などとも刃傷沙汰にんじょうざたを起して、殿の勘気をうけたりしたこともあった。素行そこう放縦ほうじゅうのように思われる。
日本名婦伝:太閤夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僧一 唯円殿のお言葉ですが、善鸞ぜんらん様は放蕩ほうとうにて素行そこうの修まらぬ上に、浄土門の信心に御反対でございます。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
諒闇りょうあん中に、皇太子が侍女と私通した。女帝から訓戒を加えたけれども、その後も素行そこうが修まらない。
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
ある時義兄が其素行そこうについて少し云々したら、泥足でぬれ縁に腰かけて居た彼女はきっと向き直り、あべこべに義兄にってかゝり、老人と正直者をまかせて置きながら
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
その子の素行そこうを疑ったり、あるいはそれが原因で疎遠そえんになったりするものですが、私の母は、私が東京へ行ってから後も、私を信じ、私の心持を理解し、私のめを思ってくれました。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
だから、あたしが今、妊娠したとしたら、その場であたしの素行そこうさとってしまいます
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
近世史上の尊王論そのものが、やはりそうで、徳川時代の尊王論の先駆者たち蕃山ばんざん闇斎あんさい素行そこう、そして水戸学の始祖光圀みつくにらが、時を同じうして四代五代将軍時代に輩出したのも偶然ではない。
尊攘戦略史 (新字新仮名) / 服部之総(著)
それとなしに山路法学士の素行そこうを調べてみると、山路は在学中、某官吏の未亡人と関係して、その未亡人から金をりだして、それで放蕩ほうとうをしているうちに、未亡人は一人むすめを残して病死した。
指環 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
南条力はいい気になってうなずいてそれを聞いている取合せが、奇妙といえば奇妙であります。ナゼならば、南条力は少なくともこのがんりきの百なるものの素行そこうを知っていなければならない人です。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
大叔父のふところに小金がたまった時分から大叔父の妻の素行そこうがぐれ始めた。
洛内の騒擾そうじょうにもせむかい、ときには、伝奏でんそうをもつこうまつる北面のともがらが、近ごろの、放埓ほうらつなる素行そこうは、何ごとぞや、遠藤盛遠に似たるは、ひとりやふたりとも思えぬ
疾くから調べていたのは、兵学家の素行そこう山鹿やまが先生でありました。そして、山鹿素行やまがそこうはその三孔のことを、講義の席でちょッと口を洩らしたがため、ついに幕府から罪を
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
光秀などは大いにその素行そこうを非難したということであった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)