くはし)” の例文
貫一もまたその逢着ほうちやくの唐突なるに打惑ひて、なかなかくはしく看るべきいとまあらざりけれど、その女は万々彼の妻なんどにはあらじ、とひとり合点せり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その概略あらましは今物書くべき心地もせねば、くはししき事の顛末をば、羅馬に到り着きて後にこそ告ぐべけれ、手を握らで別れ去ることの心苦しさを察せよといふ程のこゝろなりき。
清兵衞とあらためしなり斯る醫道いだうくはしき人なれば今此返答へんたふには及しなりされば天一坊は寶澤に相違なしと郡奉行の荷物にもつを持來し善助と云ふ者元感應院に數年すねん奉公せし故よくぞんじ居ると云を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
江戸のさかんなるに当つて、泉井以外、西に玉川の水あり、北に綾瀬の水あり。玉川の水、今猶市民これによりて活く。而れども明澄はこれ有り、真味は乏し。味にくはしき者曰く、水道の水、礬気ばんきありと。
(新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
る所なり不審ふしんに思はれなばくはしくは龜屋にて尋ね給へといふにぞ中にも年倍としばいの男が進出すゝみいでたづぬるは此人に相違さうゐなしさても駕籠のしう種々いろ/\とお世話せわかたじけなしと一れいのべじつは我々仔細しさい有て其女中を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)