筋向すじむか)” の例文
筋向すじむかいの垣根かきねきわに、こなたを待ち受けたものらしい、くわいて立って、莞爾にこついて、のっそりと親仁おやじあり。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ルクサンブルグ公園にある上院の正門の筋向すじむかいにあって、議場の討論に胃腑いのふからにした上院議員の連中が自動車に乗る面倒もなくけつけることの出来できるレストラン・フォワイヨ
異国食餌抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
みちあるくにもうへことなく、筋向すじむかふのふでやに子供こどもづれのこゑけばことそしらるゝかとなさけなく、そしらぬかほ鰻屋うなぎやかどぎては四邊あたり人目ひとめすきをうかゞひ、立戻たちもどつてとき心地こゝち
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
七つのとしであったが、筋向すじむかいの家に湯に招かれて、秋の夜の八時過ぎ、母より一足さきにその家の戸口を出ると、不意に頬冠ほおかむりをした屈強な男が、横合よこあいから出てきて私を引抱ひっかかえ、とっとっと走る。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)