磐梯山ばんだいさん)” の例文
この七月十五日には岩代いわしろ磐梯山ばんだいさん破裂という怖ろしい出来事があって、五百人ほどの惨死者を出したという報道が世人の耳目を衝動した。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
(はがき)今日きょう越後えちご新津にいつを立ち、阿賀野川あがのがわの渓谷を上りて会津あいづを経、猪苗代いなわしろ湖畔こはんの霜枯れを圧する磐梯山ばんだいさんのすさまじき雪の姿を仰ぎつつ郡山こおりやまへ。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「ございますよ。何でも今月の末までには、また磐梯山ばんだいさんが破裂するそうで、——昨晩さくばんもその御相談に、神々が上野うえのへ御集りになったようでございました。」
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
老爺さんの根気に負けて、父が福島県下へ連れてゆかれたのは、磐梯山ばんだいさんだか吾妻山あずまさんだかが破裂したすぐあとだった。父はヘトヘトになって帰って来て座らないうちにいった。
旧聞日本橋:08 木魚の顔 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
東北地方では会津の磐梯山ばんだいさんの入山などにも、山女らしい話がおりおり伝えられる。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
思見おもひみる、磐梯山ばんだいさんけむりは、くもめて、やみ蓬々おどろ/\しけれど、だいなる猪苗代ゐなはしろみづうみうつつて、とほ若松わかまつみやこうかゞはれて、そこに、東山温泉ひがしやまおんせんなまめいた窓々まど/\ともしべにながすのが遥々はろ/″\のぞかれる。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その聯隊れんたいの秋季機動演習は、会津あいづ若松わかまつ近傍きんぼうで、師団演習を終えて、のち、我聯隊れんたいはその地で同旅団の新発田しばたの歩兵十六聯隊れんたいと分れて、若松から喜多方きたかたを経て、大塩峠おおしおとうげを越え、磐梯山ばんだいさん後方うしろにして
雪の透く袖 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
が、お亀様は人が悪い、中は磐梯山ばんだいさんの峰の煙か、虚空蔵こくうぞう人魂ひとだまではないかい。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「つまり磐梯山ばんだいさんの爆発も、クレマンソオへ出した辞職届も、女たらしの大学生も、皆その白味のような物から出て来るんだ、我々の思想や感情だって——まあ、他は推して知るべしだね。」
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あの、磐梯山ばんだいさん噴火ふんくわして、一部いちぶ山廓さんくわくをそのまゝみづうみそこにした。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)