石橋しゃっきょう)” の例文
「あれ、あの石橋しゃっきょうの欄干に腰かけて、さっき散々さんざん、わが輩を苦しめやがったさい坊主と行者のきゅうしょう一が、まだ執念ぶかく見張っている」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かくして居士はその後両三年ならずして退学を決行したのであった。余もそれに遅るる一、二年にしてまた退学を決行した。「石橋しゃっきょう」という能がある。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
最も重き習物「望月」「石橋しゃっきょう」までも相伝したのであったが、ここに困った事が一つ出来た。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
たしなみがあったら、何とか石橋しゃっきょうでも口誦くちずさんだであろう、途中、目の下に細く白浪の糸を乱して崖に添って橋を架けた処がある、その崖には滝がかかって橋の下は淵になった所がある
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
番組は「勧進帳かんじんちょう」、「吉原雀よしわらすずめ」、「英執着獅子はなぶさしゅうじゃくじし」で、すえこのみとして「石橋しゃっきょう」を演じた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
正「ナンノ石橋しゃっきょうだよ、え御免なさいまし」
唐代このかた、歴朝の帰依きえふかく、その勅額は、あけ楼閣ろうかくにも仰がれる。渓谷けいこくの空には、こけさびた石橋しゃっきょうが望まれ、山また山の重なる奥までも、十三層塔そうとうかすんで見えた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、すら/\と石橋しゃっきょう前方むこうへ渡つた。それから、森を通る、姿はみどりに青ずむまで、しずかに落着いて見えたけれど、ふたかさなつた不意の出来事に、心の騒いだのはあらそはれない。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「こいつは困った。あの中には大相国寺だいそうこくじ智清ちせい禅師へ宛てた智真ちしん長老のお手紙が入っている。取りに帰れば、石橋しゃっきょうでふんづかまるし。……といって、あれ持たずには東京とうけいへ行く意味もない」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
石の反橋そりはしである。いわと石の、いづれにもかさなれる牡丹ぼたんの花の如きを、左右に築き上げた、めい石橋しゃっきょうと言ふ、反橋そりはしの石の真中に立つて、一息ひといきした紫玉は、此の時、すらりと、も心も高かつた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
石の反橋そりばしである。いわと石の、いずれにもかさなれる牡丹ぼたんの花のごときを、左右に築き上げた、銘を石橋しゃっきょうと言う、反橋の石の真中まんなかに立って、と一息した紫玉は、この時、すらりと、脊も心も高かった。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小親の牛若さこそとならば、いまに見よ、われえなば、牡丹ぼたん作物つくりもの蔽い囲む石橋しゃっきょうの上に立ちて、たけ六尺なるぞ、得意の赤頭あかがしらふって見せむ。さらば牛若を思いすてて、わが良き児とやならむずらむ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)