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矗々
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すくすく
ふりがな文庫
“
矗々
(
すくすく
)” の例文
大方の冬木立は
赤裸
(
あかはだか
)
になった今日
此頃
(
このごろ
)
でも、
樅
(
もみ
)
の林のみは
常磐
(
ときわ
)
の緑を誇って、一丈に余る高い梢は灰色の空を
凌
(
しの
)
いで
矗々
(
すくすく
)
と
聳
(
そび
)
えていた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そこで
小児
(
こども
)
は、
鈴見
(
すずみ
)
の橋に
彳
(
たたず
)
んで、
前方
(
むこう
)
を見ると、正面の
中空
(
なかぞら
)
へ、仏の
掌
(
てのひら
)
を開いたように、五本の指の並んだ形、
矗々
(
すくすく
)
立ったのが
戸室
(
とむろ
)
の
石山
(
いしやま
)
。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
妖女が馬腹をくぐる時の文句に「周囲の山々は
矗々
(
すくすく
)
と
嘴
(
くちばし
)
を揃え、頭を
擡
(
もた
)
げて、この月下の光景を、
朧
(
おぼ
)
ろ朧ろと
覗
(
のぞ
)
き込んだ」
雪の白峰
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
檣
(
ほばしら
)
、電柱、
五月鯉
(
さつきのこい
)
の
棹
(
さお
)
などになるのが、奇麗に下枝を
下
(
お
)
ろされ、殆んど本末の太さの差もなく、
矗々
(
すくすく
)
と天を刺して居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
蒼白くひろがった月光の中に、尖塔を持ち
円家根
(
まるやね
)
を持ち、
矗々
(
すくすく
)
と聳えている南蛮寺の姿は、異国的であって神々しい。
南蛮秘話森右近丸
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
何の風情もない、
饅頭笠
(
まんぢうがさ
)
を伏せた様な芝山で、
逶迤
(
うねくね
)
した
径
(
みち
)
が
嶺
(
いただき
)
に尽きると、太い杉の樹が
矗々
(
すくすく
)
と、八九本立つてゐて、二間四方の荒れ果てた愛宕神社の
祠
(
ほこら
)
。
赤痢
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
小一町登ると、左手に蒼空が、果てし無く拡がって、杉の老幹が
矗々
(
すくすく
)
と聳えていた。そこは狭いが、平地があって、谷間へ突出した岩が、うずくまっていた。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
水底
(
みなぞこ
)
のように
冷
(
つめた
)
く青い月の夜で、庭の樹々は心あるものが強いて沈黙を守っているような静けさで、
矗々
(
すくすく
)
と空に裸の枝を延ばしていた。その静けさは雨戸をしめ切った室の内までも沁みて来た。
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
蝦夷松
(
えぞまつ
)
や
椴松
(
とどまつ
)
、昔此辺の
帝王
(
ていおう
)
であったろうと思わるゝ大木
倒
(
たお
)
れて朽ち、朽ちた其木の
屍
(
かばね
)
から
実生
(
みしょう
)
の
若木
(
わかぎ
)
が
矗々
(
すくすく
)
と伸びて、若木其ものが
径
(
けい
)
一尺に
余
(
あま
)
るのがある。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
彼はすっかり驚きもしたが、其拍子に
精神
(
こころ
)
が引締りもした。で彼は素早く眼を配って
四辺
(
あたり
)
の様子を窺った。其処は何うやら裏庭らしく桐の木が
矗々
(
すくすく
)
と立っている。
人間製造
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
だがどうしてその女が、こんな寂しい森の奥に、一人で
住
(
す
)
んでいるのだろう? まったく寂しい森である。巨木が
矗々
(
すくすく
)
と聳えている。枝葉がこんもりと繁っている。
南蛮秘話森右近丸
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そう思われるような巨木が
矗々
(
すくすく
)
と、主屋の周囲に聳えていて、月の光を全く遮り、
四辺
(
あたり
)
を真の闇にしてい、ほんの僅かの光の縞を、木間からこぼしているばかりであった。
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
矗
部首:⽬
24画
々
3画
“矗”で始まる語句
矗立
矗
矗然
矗乎
矗立千尺