白茶しらちや)” の例文
落葉おちばし尽した木立こだちの間から石と泥とを混ぜた家家いへいへ白茶しらちやけた壁に真赤まつか蔦紅葉つたもみぢつて居るのはつゞれにしきとでも月並ながら云ひたい景色であつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
居て見、首筋が薄かつたとなほぞいひける、単衣ひとへ水色みづいろ友仙ゆふぜんの涼しげに、白茶しらちやきんらんの丸帯少し幅の狭いを結ばせて、庭石に下駄直すまで時は移りぬ。
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
やつとひとちがふだけのせま田圃たんぼをおしなはそろ/\とはこんでく。おしな白茶しらちやけたほどふるつた股引もゝひきへそれでもさきほうだけした足袋たび穿いてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
私は門にもたれて、羊の一匹も出てゐない、短い、いぢけた白茶しらちやけた草が生えてるばかしの人氣ひとけのない牧場を眺めた。灰色の陰鬱な日だつた。どんよりした空が「末は雪」になつて垂れかゝつた。
ふく白茶しらちやのだぶだぶとおどけ澄ました身のまわり
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ロダン夫人は無雑作に一方口いつぱうぐち入口いりくちからはひつて来られた。背の低い婦人である。白茶しらちやに白いレイスをあしらつた上被タブリエ風のひろい物を着てられる。自分の手を最初に執つて
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
銀髪のロダン夫人が白茶しらちや色にダンテルをあしらつたゆたかな一種のロオブを着て玄関の石階いしばしを降りて来られた。何時いつか写真版で見た事のあるロダン翁の製作の夫人の像其儘そのまゝびんふくらませやうだと思つた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)