もうす)” の例文
夢見ゆめみさととももうすべき Nara la Morte にはかりよんのおとならぬ梵鐘ぼんしょうの声あはれにそぞいにしえを思はせ候
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
おきみ様事、東京女子師範学校中の高等女学校に募集致し候専修科ともうすへお出し候はゞ如何哉いかがや
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
正岡先生の御逝去が吾々のために悲哀の極みなることはもうすまでもなく候えども、その実先生の御命が明治三十五年の九月まで長延び候はほとんど天のたまものとも申すべきほどにて
師を失いたる吾々 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
たしかに此故とは申難きことなれども、ひそかに是を考へ思ふに、さて御奉行ともうすは日々に諸方の公事訴訟を御裁判被成、御政務の御事繁く、平人と違ひ、年中に私の御暇有る事稀也
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
当時三十一歳のそれがし、このことばを聞きて立腹致し候えども、なお忍んで申候は、それはいかにも賢人らしき申条もうしじょうなり、さりながら某はただ主命ともうすものが大切なるにて、主君あの城を落せとおおせられ候わば
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一 まゐり来て此宿やどを見申せや、人のなさげの宿ともうす
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
古人既に閑花只合閑中看。一折帰来便不鮮。とか申候間とやかく評議致すはかへつて野暮の骨頂なるべくまた人に聞かれては当方のはじにも相なりもうすべき次第。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
貴墨きぼく拝見つかまつり候、あらたに師を失いたる吾々が今日に処するの心得いかんとの御尋おたずね、御念入の御問同憾どうかんいたりに候、それにつき野生も深く考慮を費したる際なれば、腹臓なく愚存ぐぞんちんもうすべく候
師を失いたる吾々 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
最前よりいろ/\事の道理を分けて御意見申上候得そうらえども、御聞入れ無之候得者これなくそうらえば、是非なき次第に候間、このまゝ手足を縛りてなりとお屋敷へ連れ帰り、御不憫ごふびんながら不義密通のうったえをなしもうすべしと
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
同じいやなものにても壮士そうし役者か曾我そが位ならまだ/\どうにか我慢も出来もうすべく候へども自動車の運転手や活動弁士にてはいかに色事を浄瑠璃じょうるり模様に見立てたき心はありても到底色と意気とを
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)