猛烈もうれつ)” の例文
我慢できぬほど猛烈もうれつに、起ってきて、ぼくは教わったばかりの船室ケビンにもぐりこみ、思う存分、笑ってから、再びデッキに出たのです。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
しかし艇は時速五十キロだから、ポコちゃんの前を猛烈もうれつないきおいでしゅっと通りすぎる。これではポコちゃんは艇の出入口につかまることができない。
宇宙の迷子 (新字新仮名) / 海野十三(著)
老人、子供、大抵の病人はもとより、手のあるものは火斗じゅうのうでも使いたい程、畑の草田の草は猛烈もうれつに攻め寄する。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
あま猛烈もうれつてるので、地主ぢぬし感情かんじやうがいして、如何どう中止ちうししてもらひたいと掛合かけあひるのである。
……彼はただ、わたしをちょいとからかおうと思っただけのことだろうが、その一言一句は猛烈もうれつな毒となって、わたしの血脈けつみゃくという血脈を走り回った。血がどっとばかり、頭へしよせた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
今日となツては、父子爵は最早もはや猶豫ゆうよして居られぬと謂ツて、猛烈もうれついきほひで最後の決心けつしんうながしてゐる。で是等の事情がごツちやになツて、彼の頭にひツかゝり、からまツてはげしい腦神經衰弱なうしんけいすゐじやく惹起ひきおこした。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
当時薩兵さっぺいいきおい猛烈もうれつなりしは幕末ばくまつにおける長州のにあらず。
日本流の漕法では、≪ボオトは気でげ腹で漕げ≫というのですが、彼等は腕とあしとだけで猛烈もうれつに漕ぎ、ピッチも五十前後まで楽に上がる様でした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
十年前の此村を識って居る人は、皆が稼ぎ様の猛烈もうれつになったに驚いて居る。政党騒せいとうさわぎと賭博は昔から三多摩の名物めいぶつであった。此頃では、選挙争に人死ひとじにはなくなった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
其冷評そのれいひやうかぶせるなかもつと猛烈もうれつなのは杉村氏すぎむらしで、一ばんまたおほきくなつて焚火たきびあたつて御座ござる。
「まあ。」とお房は、其の猛烈もうれつな勢にあきれて、瓢輕へうきんな顏をする。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
せまいと汚穢きたなさとは我慢するとしても、ひとの寒さは猛烈もうれつに彼等に肉迫にくはくした。二百万の人いきれで寄り合うて住む東京人は、人烟じんえん稀薄きはくな武蔵野の露骨ろこつな寒さを想い見ることが出来ぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)