片傍かたわき)” の例文
彼は咄嗟とっさの場合ハッと片傍かたわきへ飛びのいたからよかったものの、しそうでなかったら、その物体に打たれて大怪我おおけがをしている所でした。
屋根裏の散歩者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
片傍かたわきに、家来衆、めしつかわれるものの住むらしい小造りな別棟、格子づくりのうちがあって、出窓に、小瓶に、山吹の花の挿したのがのぞかれる。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
片傍かたわきへ草履草鞋を吊して商い、村上松五郎は八木やぎ八名田やなだ辺へ参っては天下御禁制の賭博てなぐさみを致してぶら/\暮して居ります。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
慌てて白髪小僧を片傍かたわきへ引っぱって避けさせようとしましたが、の時早くこの時遅く、大風のように近附いた「瞬」の馬車は白髪小僧の背中をかすめて
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
壺と、賽と、三人のな叫び声を聞いた自分は、次に三人の顔を見たんである。よくはわからない顔であった。一人の男は頬骨ほおぼねの一点と、小鼻の片傍かたわきだけが、に映った。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
やっと白尾を見て、囁いて聞くと、私たち三人がかりで片傍かたわきへ連出して、穏かに掛合ったので、何うにかしずまって黙ったが、あのがしらさかさまに植えたような頭は、いま一寸見当らない
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けれども言出いひだしたことは、いきほひだけに誰一人たれいちにん深切しんせつづくにもあへめやうとするものはく、……同勢どうぜいで、ぞろ/\と温泉宿をんせんやどかへ途中とちゆうなはて片傍かたわき引込ひつこんだ、もりなかの、とあるほこら
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)