おとっ)” の例文
「それはできないことはないだろうけれど、おとっさんはああいうふうだし、私ばかり苦労しなくっちゃならないから」
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「ところがまだあるんだ。面倒な事が。まことにどうも」と云いながらおとっさんは、手の平を二つ内側へそろえて眼の球をぐりぐりこする。眼の球は赤くなる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いえ、私はな、やっぱりお伊勢なんですけれど、おとっさんがくなりましてから、継母ままははに売られて行きましたの。はじめに聞いた奉公とは嘘のように違います。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「行ってやんなさい。おとっさんの恩を覚えておっがかあいかじゃなっか」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
多少苦々にがにがしい気色けしきに、煙管きせるでとんと膝頭ひざがしらたたいたおとっさんは、視線さえ椽側えんがわの方へ移した。最前植ええた仏見笑ぶっけんしょうあざやかくれないを春と夏のさかいに今ぞと誇っている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「その時はおとっさんとおっかさんで暮らしてもらうのさ。三年ぐらいどうにでもしてもらわなくっちゃ」
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
(やあおとっさん——彼処あすこおっかさんと、よその姉さんが。……)——後々のちのち私は、何故、あの時、その船へ飛込とびこまなかったろうと思う事が度々たびたびあります。世をはかなむ時、病にくるしんだ時、恋に離れた時です。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はじめかい。本来なら一が一番好いんだけれども。——おとっさんと宗近とは、ああ云う間柄ではあるしね」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「お前は無理をしてはいけないよ。おとっさんがするから、あまり働かずにおおきよ」
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
おとっさんは帰らないけれどね、いつものね、うなぎが居るんだよ。」
夜釣 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「御免なさい。御免なさい。おとっさんに言っては可厭いやだよ。」
絵本の春 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「勉強しようね、僕はおとっさんがないんだよ。さあ、」
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わたいたちは、おとっさんを待つてるよ。」
夜釣 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おとっさんは帰つたかい。」
夜釣 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)