煖爐だんろ)” の例文
新字:煖炉
一寸ちよつとたまへ」とつて、燐寸まつち瓦斯ガス煖爐だんろいた。瓦斯ガス煖爐だんろへや比例ひれいしたごくちひさいものであつた。坂井さかゐはしかるのち蒲團ふとんすゝめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私の心はもう煖爐だんろの美しい焔へとしみ入るやうだ。私は温かい心から父の画室の静寂を祝福する。私は書かなければならぬ。……
恢復期 (新字旧仮名) / 神西清(著)
テムプル先生は、ヘレン・バーンズに、煖爐だんろの傍の低い肱掛椅子ひぢかけいすにかけるようにと云つて、彼女は別のに坐り、私を側に呼んだ。
眼に入るものといへば何時も眼に馴れたものばかりだ………北側きたがはのスリガラスの天井、其所そこから射込さしこむ弱い光線、うす小豆色あづきいろかべの色と同じやうな色の絨繵じうたん、今は休息きうそくしてゐる煖爐だんろ、バツクのきれ
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
この婦人は長い教室のの側の末席の方に立つて——兩側に煖爐だんろがあつたから——默つて、まじめな顏をして、二列の生徒を見渡してゐた。
宗助そうすけ手際てぎはでは、室内しつない煖爐だんろける設備せつびをするだけでも容易よういではなかつた。夫婦ふうふはわが時間じかん算段さんだんゆるかぎりをつくして、專念せんねん赤兒あかごいのちまもつた。けれどもすべては徒勞とらうした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其處では勇氣が證される。精力が振はれる、そして不屈ふくつの精神がきたへられる。この煖爐だんろの側では、元氣な子供が彼にまさるのだ。