無精ぶしやう)” の例文
そして田舎ゐなかかへつてから、慇懃いんぎん礼状れいじやう受取うけとつたのであつたが、無精ぶしやう竹村たけむら返事へんじしそびれて、それりになつてしまつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
僕は生憎あいにく多忙の為に、——と云ふよりは寧ろ無精ぶしやうの為にそれ等の議論を読まずにゐる。従つていつか前人の説を繰り返すことになるかも知れない。
かみ創造さう/″\御心みこゝろ人間にんげんたのしましめんとするにありてくるしましめんとするにあらず。無為むゐ天則てんそくなり、無精ぶしやう神慮しんりよかなへり。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
「なんて無精ぶしやうな女でしよう、ね、あんなだから嫁に行つても追ひ出されたのでしようよ。」
泡鳴五部作:01 発展 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
「なににいさんだつて、さう御上手おじやうずぢやなくつてよ。それににいさんは貴方あなたよりほど無精ぶしやうね」
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
無精ぶしやうな原敬氏だつたら、動物園にゐる西伯利シベリア産の狐のやうに、窓から白つぽい頭をのぞけて、こすさうに一寸会釈をする位に過ぎなからうが、この英国の首相は態々わざ/\くちに出て来て
無精ぶしやうしてがはの石をそのままにしといてかかるものもないことはないが、さうすつと、掘り下げ中に側が崩れ落ちてからに、底で作業中の者が生き埋めにならんとも限らんのぢや。」
生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
牛乳ぎうにう牛乳ぎうにう——牛乳ぎうにうはないのか。——夜中よなかると無精ぶしやうをしをるな。」
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
が、生来の無精ぶしやうのためにほこりやインクにまみれたまま、時には「本是山中人」さへ逆さまになつてゐるのである。
身のまはり (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
利己主義者りこしゆぎしやを以て任ずる僕の自己犠牲をおこなつたのは偶然ではない。鴛鴦は顔を下から見ると、長ながと鼻毛はなげを伸してゐる。鷺もまた無精ぶしやうをきめてゐるのか、髪のくささは一通りではない。
鷺と鴛鴦 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)