災禍さいか)” の例文
所謂いはゆる敵情偵察てきじようていさつである。敵情てきじようこと/″\くわかつたならば、災禍さいかをひきおこすところのかの暴力ぼうりよくくだくことも出來できよう。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
閉じ永劫えいごう不変の観念境へ飛躍ひやくしたのである彼の視野には過去の記憶きおくの世界だけがあるもし春琴が災禍さいかのため性格を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
日本は人間の手で打たれず、自然の手でたたかれました。「誰か父のらしめざる子あらんや」と云う筆法ひっぽうから云えば、災禍さいかの受けようにも日本は天の愛子であります。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「ふうむ」と忠相は瞑目めいもくして、「いわば擾乱じょうらん災禍さいか——じゃな。して、こうなればどうだ?」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
今から想えばこの本の草稿が災禍さいかを免れて無事なるを得たのは大きな恵みでありました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
信雄の清洲移動にともない、戦雲の拡大にただならぬところもあり、にわかに犬山へ引き揚げを命ぜられ、左右わずかな人数をつれて、夜をかけて急ぎに急いできた途上の災禍さいかであったという。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
行ってみると、予期せぬ災禍さいかに会って落馬した古高新兵衛は、場内取締りの任に当っていた町方役人七八人と、同藩家中の藩士達両三名に守られながら、必死と介抱手当をうけているところでした。
時刻がたつに従って、大きくなる災禍さいかであった。
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
たゞわれ/\日本人につぽんじんとしてはかような天災てんさいくつすることなく、むし人力じんりよくもつてその災禍さいかをないようにしたいものである。かくするには地震ぢしん火山かざん何物なにものであるかをきはめることが第一だいゝちである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
大阪の方は格別のこともなかったので阪神間がそう云う災禍さいかったろうとは夢にも想像していなかったところ、正午頃に号外が出、住吉川と蘆屋川あしやがわ沿岸の惨害が甚大じんだいであることを知って
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
おそった災禍さいかはいろいろの意味で良薬となり恋愛においても芸術においてもかつて夢想だもしなかった三昧境さんまいきょうのあることを教えたであろうてる女はしばしば春琴が無聊ぶりょうの時を消すために独りで絃を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)