消防夫しごとし)” の例文
危え、と蔵の屋根から、結束した消防夫しごとしが一にん、棟はずれに乗出すようにして、四番組のまといを片手に絶叫する。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おもつたのは空頼そらだのみで「あゝ、わるいな、あれが不可いけねえ。……なかへふすぶつたけむりつのはあたらしくえついたんで……」ととほりかゝりの消防夫しごとしつてとほつた——
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
赤い鼠がそこまで追廻したものらしい。キャッとそこで悲鳴を立てると、女は、宙へ、飛上った。くめの仙人をさかさまだ、その白さったら、と消防夫しごとしらしい若い奴は怪しからん事を。
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ポンと欄干から大川へ流れたのを、橋向うへ引揚げる時五番組の消防夫しごとしが見た事と。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
消防夫しごとしにも、駕籠屋にも、あえて怪我をしたらしいのはない。おんなたちにも様子は見えぬ。もっとも、南地第一の大事な市の列に立てば、些細ささいきずなら、弱い舞妓も我慢してかくして退けよう。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
人形使 しょう篳篥ひちりきが、紋着袴もんつきばかまだ。——消防夫しごとしが揃って警護で、お稚児がついての。あとさきの坊様は、こうかっしゃる、御経を読まっしゃる。御輿舁みこしかつぎは奥の院十八軒の若いしゅ水干烏帽子すいかんえぼしだ。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
戦争の最中に支那ちゃん小児こどもを殺したってあんなさわぎをしやあしまい。たちまち五六人血眼になって武者振つくと、仏敵だ、殺せと言って、固めている消防夫しごとしどもまで鳶口とびぐちを振ってけ着けやがった。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
宝の市の最後のは、稚児ちご市女いちめ、順々に、後圧あとおさえの消防夫しごとしが、篝火かがりび赤き女紅場の庭を離れる時から、屋台の囃子、姫たちなど、傍目わきめらぬおんなたちは、さもないが、真先まっさき神輿みこしにのうた白丁はくちょうはじめ
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)