泥水どろみづ)” の例文
母親のおとよ長吉ちやうきち初袷はつあはせ薄着うすぎをしたまゝ、千束町せんぞくまち近辺きんぺん出水でみづの混雑を見にと夕方ゆふがたから夜おそくまで、泥水どろみづの中を歩き𢌞まはつために
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
今我黒き泥水どろみづのなかに鬱すと、かれらこの聖歌によりて喉にうがひす、これ全きことばにてものいふ能はざればなり 一二四—一二六
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
たちまち、ざつとなつて、ポンプでくがごとく、泥水どろみづ両方りやうはうほとばしると、ばしやんと衣裳鞄いしやうかばんねかゝつた。運転手台うんてんしゆだい横腹よこばらつなけてんだのである。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それは、どぶがもうぢきおしまひになつて、下の大きなほりわりの中へ、泥水どろみづがどうと落ちこむ音でした。
一本足の兵隊 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
遺骨ゐこつは三四たい合葬がつそうした形跡けいせきがある。其所そこにも此所こゝにも人骨じんこつよこたはつてるが、多年たねん泥水どろみづしたされてたので、れると宛然まるでどろごどく、かたちまつた取上とりあげること出來できぬ。
「あら、こほろぎ? ぢや、私が泥水どろみづを窓からすてた時に下を通つてた男よ!」
こほろぎの死 (新字旧仮名) / 村山籌子(著)
「しかし文句もんくはいひますもののね、震災しんさいときは、このくらゐな泥水どろみづを、かぶりついてみましたよ。」
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)