氷川ひかわ)” の例文
二人は氷川ひかわ神社の拝殿近く来た。右側の茶屋から声を掛けられたので、殆ど反射的に避けて、やしろの背後の方へ曲がった。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
その水道端、こんにちの二丁目に日輪寺という曹洞宗の寺があります。その本堂の左手から登ってゆくと、うしろの山に氷川ひかわ明神のやしろがありました。
半七捕物帳:55 かむろ蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
赤坂氷川ひかわ神社の樹木の茂った崖下に寺がある。墓地に六文銭の紋章を刻んだ大名の墓がいくつも倒れている寺である。
枯葉の記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
平河ひらかわ天神だの、氷川ひかわ神社、また神田明神などへも、それぞれ莫大な御寄進をして、それが、無二の楽しみだと仰っしゃっている御奇特人でございまする
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「飛んでもねえ、私は何も悪いことなんぞをする人間じゃあねえ、この通り、六郷下ろくごうくだりの氷川ひかわ筏師いかだしだよ」
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
更にきてはたけの中にたゝずむ。月はいま彼方かなた大竹薮おほだけやぶを離れて、清光せいくわう溶々やう/\として上天じやうてん下地かちを浸し、身は水中に立つのおもひあり。星の光何ぞうすき。氷川ひかわの森も淡くしてけぶりふめり。
良夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
「今朝はいつもより早くね、氷川ひかわへ行くと云つて」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
武蔵西多摩郡氷川ひかわ村大字氷川字安寺沢
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
氷川ひかわの坂ンとこですよ、」
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
氷川ひかわ神社、あふひ居。
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
そこで、イヤな思いをして、翌日は早々、御岳山に登り、御岳の裏山から氷川ひかわへ出で、小河内おごうちで一泊。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
赤坂の氷川ひかわさまもお神輿みこしが渡っただけで、山車だしも踊り屋台も見合せ、わたくしの近所の天王さまは二十日過ぎになってお祭りをいたしましたが、そういう訳ですから
蜘蛛の夢 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
裏窓から西北のかた山王さんのう氷川ひかわの森が見えるので、冬のうち西北の富士おろしが吹きつづくと、崖の竹藪や庭のが物すごく騒ぎ立てる。窓の戸のみならず家屋を揺り動すこともある。
鐘の声 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
イタンドリ 同 西多摩郡氷川ひかわ
氷川ひかわのかむろ蛇の観世物、その正体を洗えば大抵そんな物なんですが、つまりは人間の好奇心とか云うのでしょうか、だまされると知りながら木戸銭を払うことになる。
始めて六尺横町ろくしゃくよこちょうの貸本屋から昔のままなる木版刷もくはんずりの『八犬伝はっけんでん』を借りて読んだ当時、子供心の私には何ともいえない神秘の趣を示した氷川ひかわの流れと大塚の森も取払われるに間もあるまい。
伝通院 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
あれから御岳の裏山伝いに氷川ひかわへ落ち、そこの炭焼小屋で夜を明かし、上野原の親戚をそっとあざむいて旅費を借りて、それで二人が甲州街道を江戸へ下った時、やはりこの袷を着ていたのであります。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
なんだか気になるので、五月の末に無沙汰の詫びながら手紙を出すと、すぐその返事が来て、来月は氷川ひかわ様のお祭りで強飯こわめしでも炊くから遊びに来てくれとのことであった。
半七捕物帳:05 お化け師匠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
東の方は本郷ほんごうと相対して富坂とみざかをひかえ、北は氷川ひかわの森を望んで極楽水ごくらくみずへとくだって行き、西は丘陵の延長が鐘ので名高い目白台めじろだいから、『忠臣蔵』で知らぬものはない高田たかた馬場ばばへと続いている。
伝通院 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「へい、氷川ひかわの方から」