死水しにみず)” の例文
わたくしは他に子供はございません、此様こんの田舎育ちの野郎でも、たっ一粒者ひとつぶものでございます、人間は馬鹿でございますが、私の死水しにみずを取る奴ゆえ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
親不孝者と見る人々の目を背中に感じながら、白い布を取って今更の死水しにみずを唇につけるなど、蝶子は勢一杯せいいっぱいに振舞った。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
親の死水しにみずもとらなかった不孝の罰が今身にこたえる。これからは女房子のそばを、死ぬまで必ず離れはしない。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
其割前を貰えるという事だけが、死水しにみず同様、末期まつごの望みであるそうな、アワレと云うも却々なかなかにオロカなりける次第なりけり、近頃の不経済学全集も亦其轍を同うするに到れば
もしあのあわれな御婆さんが善人であったなら、わたしは泣く事が出来たろう。泣けないまでも、相手の心をもっと満足させる事が出来たろう。零落した昔しの養い親を引き取って死水しにみず
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いまの喧嘩は仕方がねえ、それ川柳点にもあったじゃねえか、死水しにみずをとるは兼平かねひら一人なりって、小勝さんじゃねえが一番おしまいの土壇場へいって真心で師匠に尽しゃそれでいいんだ。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
「ははあ、そんなことですか。もし戦陣なら親のかばねをふみ越えてさえ戦うのが武門のつね。たたみの上でみまかった父の死水しにみずを取って、征途にのぼれるなどは、まだしあわせではございませぬか」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たった一人の伯父さん、年が年だから死水しにみずを取るがいと、三藏は気の付く人だから、多分の手当をくれましたから、いとまを告げ出立しゅったつを致しまして
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
こんなものに死水しにみずを取って貰う気もないし、また取るほどの働のあるはずがない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
またわしは別に兄弟も何もないから、此の娘を請出してわたし妹分いもとぶんたいというは、此の娘の様な真実者なら、わし死水しにみずも取ってくれようとこういう考えなんだが
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
尼「喧嘩をしてはいけません、私もお賤の為には親だから死水しにみずを取って貰いいが親子でありながらそうも云われず、又お賤も私の死水を取る気はありますまい」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私の子に成って何うか死水しにみずとって貰いたい、築地のお家主にも話を仕ようが、どうか得心して下さいな
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お前のお内儀かみさんが出来たら、夫婦で看病でもしておくれ、死水しにみずだけは取って貰いたいと思って
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ことにゃア女の事だから、此の兄の死水しにみず手前てまえが取るのが当前あたりまえだのに、何の因果で此様こんな悪婦あくとうが出来たろう、お父様やじさまも正直なお方、私も是までさのみ悪い事をした覚えはないのに
此方こっちへ来なさい、縁あってお前はわしの処に嫁に来ようというは実におもいきや、今日こんにち三々九度の盃をすれば生涯しょうがい死水しにみずを取合う深い縁、お前は来たばかりであるが少し申し聞けることがある
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
相「ナアニあれはわたくしの大事な聟で、死水しにみずを取ってもらう大事な養子だから」
離れてるから私も近しくきもしねえけんど、其の兄の一人娘で、死ぬ時に私へ遺言して、われの娘にしろってえから、私もあれにかゝって、死水しにみずを取って貰うべえと思ってるたった一人の若草に
娘の好いた聟を取って其の若夫婦に私は死水しにみずを取って貰う気だが、鳶頭何うだろう、と仰しゃるのだ、お内儀さんの思召おぼしめしでは、一時おめえさんに暇を出して、世間でぐず/\いわねえようにしちまって
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)