此上こよ)” の例文
ことのほかりが固いが、細工がきくところから、これを丑紅珊瑚と呼んで、好事こうずな女たちのあいだに此上こよなく珍重されていた。
此家ここの隣屋敷の、時は五月の初め、朝な/\學堂へ通ふ自分に、目も覺むる淺緑の此上こよなく嬉しかつた枳殼垣からたちがきも、いづれ主人あるじは風流をせぬ醜男か
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
わが事を賞むるも愚かしけれど、われ生得みめかたち此上こよなく美はしかりしとなり。されども乳母の粗忽とか聞きぬ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
春枝夫人はるえふじんにすぐれて慈愛じひめるひと日出雄少年ひでをせうねん彼等かれらあひだ此上こよなくめでおもんせられてつたので、たれとて袂別わかれをしまぬものはない、しか主人しゆじん濱島はまじま東洋とうやう豪傑がうけつふう
女子をなごさかりは十年ととせとはなきものになるに、此上こよなき機會をりを取りはづして、卒塔婆小町そとばこまち故事ふるごとも有る世の中。重景樣は御家と謂ひ、器量と謂ひ、何不足なき好き縁なるに、何とて斯くはいなみ給ふぞ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
私も決して喜んで行かうとは思ひませぬ、乍併しかしながら、私共同志者の純白の心事が、斯かることの為に、政府にも国民にも社会一般に説明せられまするならば、べうたる此一身にとつ此上こよなき栄誉と思ひます
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
此家ここの隣屋敷の、時は五月の初め、朝な/\学堂へ通ふ自分に、目も覚むる浅緑の此上こよなく嬉しかつた枳殻垣からたちがきも、いづれ主人あるじは風流をせぬ醜男ぶをとこ
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
やがて不興気なるおももちにて黄色なる歯を剥き出し、低き鼻尻に皺を刻みつ。和蘭陀オランダ伝来のくれなゐの花の種子を蒔くなり。此等これらの秘蔵の種子たねにして奈美殿の此上こよなく好み給ふ花なり。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
此上こよもなく 興がらせつゝ
髪切虫 (新字新仮名) / 夢野久作(著)