横柄わうへい)” の例文
もともと天下を我家と心得て和上わじやうは岡崎の土地などを眼中に置いて居ない所から、在所の者に対して横柄わうへい態度たいども有つたに違ひ無い。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
「さうね、母さま、でも母さまは……さうね、いゝことよ。」とピアノの腰掛にかけたまゝ此方を向き乍ら、ブランシュの横柄わうへいな聲が聞えた。
とらしか返答へんたふ致すべしとさも横柄わうへいのべけるに兩人再び驚きしが大膳は聲をはげまし汝天下の御落胤ごらくいんなどとあられもなきいつはりを述べ我々をあざむき此場を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
渠はこちらのそばを二三席過ぎたところの、通り道がはの席を占める爲め、窓ぎはの客と肱かけの間に、でツぷりしたからだを横柄わうへいに割り込んだ。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
だが、一貫して現はれてゐるのは、小柄の者がさうである場合特に目立つ、そして見る者の咽喉のあたりをかゆくさせるやうな、あの横柄わうへいさであつた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
伴天連ばてれん、さあ、婚礼はわたしがさせてもいが、——何しろ阿蘭陀オランダ生れだけに、あの女の横柄わうへいなのは評判だからね。
長崎小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
この男の横柄わうへいな口癖を、私はあまり好いてゐなかつたので、返事もしずに、黙つて寝た振りを続けてゐた。
大凶の籤 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
もれえたいものがあるで、ぢきぢやぞ。)と、くびをぐたりとりながら、横柄わうへいふ。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
香雲は相變らず横柄わうへいうなづいてゐたが、やがて、「天南といふものが先生のお世話になつて居りますさうで、あれはわしの長男ですから、寺を相續する身分ぢやで、一應お歸しを願ひたい。」
ごりがん (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
そして、「下のものに横柄わうへいで、上のものにぺこ/\する間は、あの人もまだ第一流にはなれません、ね」と云つた。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
「どうしたと云ふのです。」と横柄わうへいな別の聲がいた。さうして、リード夫人が、帽子のレイス飾を廣くひるがへしながら、激しく衣擦れの音を立てゝ、廊下傳ひにやつて來た。
ば一先はづさせ申べしとて兩人は急にはかま羽織はおりにて彼旅館へおもむき中の口に案内をこはば此時取次の役人は藤代要人成しが如何にも横柄わうへいに何用にやと問ば庄藏三郎兵衞の兩人は手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わしはかういふものぢやがと、古帳面の端を切つて拵へて來た「願念寺住職橋川隆法」と、大きく書いた手札を渡すと、「文人畫の香雲はわしぢやが、まア上りたまへ。」と、横柄わうへいなことを言つた。
ごりがん (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「お前は何を考へてゐるのだ。」と、横柄わうへいに言葉をかけました。
杜子春 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
新公は横柄わうへいに云ひ放つた。
お富の貞操 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
つけ出來いできたり申けるは町奉行大岡越前守公用人平石次右衞門と申は其方そのはうなるか拙者は天一坊樣重役ぢうやく山内伊賀亮なり未だ大岡には對面せねど勤役中きんやくちう太儀たいぎと然も横柄わうへいの言葉なり平石次右衞門は平伏し御意のとほり大岡が使者平石次右衞門に候天一坊樣益々ます/\御機嫌能く恐悦に存じ奉つり候大岡參上さんじやうし以て申上べき處當八山は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)