はん)” の例文
若しちよくにしてなく、はんにしてれいならずんば、又是病なり。故に質を存せんと欲する者は先づすべからく理径明透して識量宏遠なるべし。
文芸鑑賞講座 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「江戸の絵図面をはんにおこして、売りさばいている店は、たしかにそのほうのところだったと存じて参ったが、違うかな」
どこか高い所でするしょうげん鉄笛てってきはん(一種のカスタネット)などの奇妙な楽奏がくそうの音に、はっと耳をまされていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後で、常さんと語合かたりあうと……二人の見たのは、しかもそれが、錦絵をはんに合わせたように同一おなじかったのである。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ここにかく起稿の年月をあきらかにしたるはこの書はん成りて世に出づる頃には、篇中記する所の市内の勝景にして、既に破壊せられて跡方もなきところすくなからざらん事を思へばなり。
官位双六は前のよりは後に出来たもので、はん行で古いのは正徳・享保ごろのを最古とする。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
もう疾くに解定のはんも鳴って仕舞った。只さえ静かな山は今一層の静かさである。聞えるものは、折々の汽車の汽笛、それに窓前の虫の音。十一月も半ばを過ぎておるけれど、尚お虫の音を聞く。
鹿山庵居 (新字新仮名) / 鈴木大拙(著)
「二はんの橋」
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あとで、つねさんと語合かたりあふと……二人ふたりたのは、しかもそれが、錦繪にしきゑはんはせたやうに同一おなじかつたのである。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
而シテ今者こんしゃ秋山小島ノ二氏ソノ遺稿ヲ以テマサニコレヲはんセントス。因テ余ガ一閲ヲ請フ。余コレヲ閲シテ大ニ驚イテ曰ク雲如ノ詩ここニ至ツテ別ニ絶佳ヲ加フ。以前ノ詩ハ佳ナラザルニ非ズ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)