朱羅宇しゅらう)” の例文
楽屋へ来たのは洗い髪の中年増ちゅうどしま。色が白くて光沢つやがある。朱羅宇しゅらう煙管きせると煙草盆とをさげて、弁慶縞の大柄おおがらに男帯をグルグル巻きつけて
化粧をらして、座敷着の帯つきを気にして、茶屋のかかるのを、長火鉢ながひばちのそばで、朱羅宇しゅらうを置いたり捨てたりして、待ち焦がれている。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大がらのはでな座ぶとんが一枚、そばにはまたさらになまめかしい朱ぬりの箱まくらが置かれてあって、その上に朱羅宇しゅらうが一本、タバコ盆が一個。
朱羅宇しゅらう長煙草ながぎせるで、片靨かたえくぼ煙草たばこを吹かしながら田舎の媽々かかあと、引解ひっときもののの掛引をしていたのをたと言う……その直後である……浜町の鳥料理。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女持の華奢きゃしゃな短刀が、ふくよかな花嫁の胸に突っ立って、朱羅宇しゅらうのように燃えているのも凄惨です。
芸州浪人の茨右近いばらうこんという男、これが、その、よろず喧嘩買い入れの喧嘩師で、叩くとかあんと音のしそうな、江戸前のいきのいい姐御あねごがひとり、お約束の立て膝に朱羅宇しゅらう長煙管ながぎせる
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ゆうべ吉原よしわらかれた捨鉢すてばちなのが、かえりの駄賃だちんに、朱羅宇しゅらう煙管きせる背筋せすじしのばせて、可愛かわいいおせんにやろうなんぞと、んだ親切しんせつなおわらぐさも、かずあるきゃくなかにもめずらしくなかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
がんりきの野郎が如才じょさいなく、携えて来たお角の朱羅宇しゅらう長煙管ながぎせるを取って、一服つけて、それを勿体もったいらしく白雲の前へすすめてみたものです。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
体を腹ンばいにして枕の上にあごをのせ、朱羅宇しゅらうのきせるで
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
竜之助は、朱羅宇しゅらうでも、金張きんばりでもない、ただの真鍮しんちゅうの長煙管で、ヒタヒタと自分の頬をたたきながら、我と我身を冷笑するのは、今にはじまったことではありません。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
とつおいつの末が、朱羅宇しゅらうの煙管へ、やけに煙草を詰め込むのが落ちで、むやみにじれったがっているところへ、二階で物音がしましたから、吸いかけた煙管をはなして天井を見上げている。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
朱羅宇しゅらうの長い煙管の吸附け煙草がどうした。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)