未生みしやう)” の例文
例之たとへば弟汝楩の子万年まんねんの女類は夭折の年月或は契合すべく、更に下つて万年の子くわん三の女つうとなると、明に未生みしやうの人物となる。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「まあなにからはひつてもおなじであるが」と老師らうし宗助そうすけむかつてつた。「父母ふぼ未生みしやう以前いぜん本來ほんらい面目めんもくなんだか、それをひとかんがへてたらかろう」
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これが徃時むかしの、妻か、夫か、心根可愛や、懐かしやと、我を忘れて近寄る時、忽然たちまちふつと灯は滅して一念未生みしやうの元の闇に還れば、西行坐を正うして、能くこそ思ひ切り玉ひたれ
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
はみづにかくれ 微風そよかぜの夢をゆめみる 未生みしやうの薔薇の花。
藍色の蟇 (新字旧仮名) / 大手拓次(著)
大小だいせう遠近ゑんきんもなくほうけたり未生みしやうわれや斯くてありけむ
和歌でない歌 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
宗助そうすけには父母ふぼ未生みしやう以前いぜんといふ意味いみがよくわからなかつたが、なにしろ自分じぶんふものは必竟ひつきやう何物なにものだか、その本體ほんたいつらまへてろと意味いみだらうと判斷はんだんした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
やがて食事しよくじえて、わがへやかへつた宗助そうすけは、また父母ふぼ未生みしやう以前いぜん稀有けう問題もんだいまへゑて、つとながめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)