服膺ふくよう)” の例文
保吉はいまだにこの時受けた、大きい教訓を服膺ふくようしている。三十年来考えて見ても、なに一つろくにわからないのはむしろ一生の幸福かも知れない。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
黄白青銭こうはくせいせんが智識の匹敵ひってきでない事はこれで十分理解出来るだろう。さてこの原理を服膺ふくようした上で時事問題にのぞんで見るがいい。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
吾党の男女は、独立自尊の主義を以て修身処世の要領とし、之を服膺ふくようして、人たるの本分をまっとうすきものなり。
修身要領 (新字旧仮名) / 福沢諭吉慶應義塾(著)
アメリカ主義と服膺ふくよう主義(ソヴィエートを指す)とに対する抗争は、一九三〇年の一特徴であって、ジョルジュ・デュアメルの『未来生活の諸情景』と
美学入門 (新字新仮名) / 中井正一(著)
少くとも現代日本の官許教育方針を丸薬の如く服膺ふくよう出来ない点だけでも、あきらかに即刻放逐さるべき不良教師である。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
その言は取捨せざるべからざるものなきにあらずといえども、その精神は何人も服膺ふくようせざるべからざる所なり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
御逃亡の君については、詮議せんぎはもちろん、尊氏の意を服膺ふくようして、むしろ予想しうる二次、三次のそなえに心をくばるべきであるとし、ほどなくみな、退出した。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつ全人類の服膺ふくようすべき法則であるなどと、どうして諸君はそれほど確実に信じ切っていられるのか? そんなことはまだ今のところ、単に諸君の仮定にすぎないではないか。
姉は絵を習い出すと、めきめきうまくなって、師匠の言うことは眷々けんけん服膺ふくようして、熱心に通った。実に師匠思いで、先生から貰ったものは紙一枚でも大切にしまって記念にしていた。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
廿九歳で後家ごけになってから猶更なおさらパリパリしていた養母の亀吉は、よき芸妓としての守らねばならぬしきたりを可愛い養娘むすめであるゆえに、小奴に服膺ふくようさせねばならないと思っていた
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
曲げるような条件のないところで、学術論として集会の席上で、或はケンケン服膺ふくようする事情におかれている個人対手にその説を曲げないというほど、たやすい真直さはないのですもの。
「ところで僕の家の助手は僕の忠告を服膺ふくようしたから大成功を博した」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
いやさすがは源敬公、お考えに間違いはない! ……ここに書かれた源敬公のご文章、これさえ心に取り入れて、服膺ふくようしたならば間違いはござらぬ。もちろん尾張家は安泰でござる! ……さあさあこれを
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
い。己の服膺ふくようしているのは
少くとも現代日本の官許教育方針を丸薬の如く服膺ふくよう出来ない点だけでも、あきらかに即刻放逐さるべき不良教師である。
入社の辞 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
語学を熟達せしむるのかたはら余が文学の研究に従事したるは、単に余の好奇心に出でたりといはんよりは、半ばは上田局長の言を服膺ふくようせるの結果なるを信ず。
『文学論』序 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
第二十九条 吾党の男女は、みずから此要領を服膺ふくようするのみならず、広く之を社会一般に及ぼし、天下万衆と共に相率あいひきゐて、最大幸福の域に進むを期するものなり。
修身要領 (新字旧仮名) / 福沢諭吉慶應義塾(著)
私はお言葉を服膺ふくようして出かけませんが、とりにだけは行って貰いますから。
「謹んで服膺ふくよう仕ります」常陸はうやうやしく一礼した。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
大いに難有ありがた服膺ふくようする訳であります。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)