掛取かけとり)” の例文
吉岡家の表部屋へは、掛取かけとりいちをなして、押しかけていた。頭のひくい町人が、堪忍をやぶって、呶鳴っているのである。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
厚い帯をめかけているので、自分がすぐ玄関へ出る訳に行かなかった。といって、掛取かけとりでも待たせておくように、いつまでも彼をそこに立たせるのも不作法であった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
行く戀病こひやみなりとは露知つゆしらぬ兩親大きに氣をもみて相藥など與ふるうち其日の申刻なゝつさがころ淺草邊まで掛取かけとりに行たる忠兵衞歸り來てきけ斯々かう/\言わけと主個あるじが話すに打驚うちおどろきおいやと仰せ有たるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その時には大抵たいてい大阪の言葉もしって居たから、すべて奴の調子に合せてゴテ/\話をすると、奴は私を大阪の町人が掛取かけとりにでも行く者と思うたか、中々横風おうふうでろくに会釈もせずに颯々さっさつと別れて行く
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
わざと遠慮ゑんりよして勝手口かつてぐちまはると、摺硝子すりがらすあかるいうつつて、なかはざわ/\してゐた。あががまち帳面ちやうめんつてこしけた掛取かけとりらしい小僧こぞうが、つて宗助そうすけ挨拶あいさつをした。ちやには主人しゆじん細君さいくんもゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
掛取かけとりたちをめまわして
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)